介護の人手不足 人間力を生かす職場を(8月21日付)
人手不足が盛んに言われている。技能実習生など外国人労働者の導入もその解消策の一環である。だが、現実には単に安価な労働力として雇用する意図の方が強く、それでは一時的な解決にしかならない。外国人に都合良く滞在期間だけ働いてもらおうというのでは、虫が良すぎるだろう。こうした発想の根には、非正規労働者を雇用の調節弁としてきた企業側の姿勢があるのではないか。
そもそも国内には潜在的に人材があるはずだ。失業者は190万人、引きこもりの人は146万人いるといわれている。彼らは働きたいけれど働き口がない、あるいは自分が働く態勢にまで至っていない。また、定年を過ぎてもまだまだ働きたいシニア層も年々増えている。人手不足というなら、どうして彼らに着目しないのだろうか。
慢性的な人手不足なのが介護職員である。高齢化時代に不可欠なエッセンシャルワーカーだが、給与が低い割に仕事はきつく、人気がない。だから外国人労働者の導入をというわけだが、それは根本的に発想が違う。介護職員は2026年度には25万人の不足が見込まれると予測されているが、シニア層など職業のない人にも参入してもらえれば、十分過ぎるほどの人材が確保できるはずだ。
それには官民挙げて取り組んでいかなければならない。国がまず介護報酬の金額を上げて、給与水準を高くすることだ。また高齢者施設の側も、国内で積極的に人材確保に努めるべきである。そして何より焦眉の急は、3Kと呼ばれる介護の職場改善だ。しばしば過重な労働のために職員が心身共に疲弊し、本来求められる人間的な支援を十分にこなせなくなってしまうからだ。こうした人間的支援こそが介護職の魅力なのである。
近年、新型の介護ベッドや移動リフトなど、福祉用具も優れたものが増えてきた。近い将来は介護ロボットも開発されるかもしれない。これらを活用することで、重労働が軽減され、人間的支援をより可能にすることができる。またAIを組み込んだ介護機器ができれば、新たな仕事の魅力も生まれるだろう。
人手不足という言葉には、どこか人間性を忘れたような響きがある。人間とは単なる手でも労働力でもない。対人援助職は人間対人間の仕事であり、そこに求められるのは責任感や共感性という人間力だ。コスト等の問題もあるだろうが、宗教系、仏教系の高齢者施設には、それぞれの教えに基づき人間力が発揮できる職場づくりの先鞭をつけることを期待したい。