宗教と政治の戦後史 統一教会・日本会議・創価学会の研究…櫻井義秀著
安倍晋三・元総理の銃撃事件以後、我が国では「宗教と政治」の問題が特に注目を集めている。政教分離が政治的に問われるのは今に始まったことではないが、保守系政治家の旧統一教会との無自覚な関わり方は、日本の政治そのものの脆さを垣間見させた。
著者には統一教会に関する諸研究、アジア諸国の政教関係を取り上げた編著、創価学会を「政治宗教」という独自の概念で分析した業績があり、この新書は宗教と国家・政治に関わるそうした研究成果を踏まえている。
本書の狙いは政教分離の憲法原則そのものについて議論することではない。「宗教の教義や信仰に基づいた社会を実現するため、政治家や政党に関わったり、自ら政治組織を立ち上げたりして政治権力を活用する宗教」という「政治宗教」の概念(創価学会に限定しない)に基づいて、日本における宗教と政治の関係の実態を腑分けすることを課題とする。
著者が考える政教関係のあるべき姿は「政治と宗教が緊張感を持った関係を維持すること」である。その緊張感を欠くと「政治化する宗教」「宗教化する政治」を生み出す。それは公共性や国民の公益にそぐわない効果をもたらすのではないか、という点に本書の批判は向けられている。
定価990円、朝日新聞出版(電話03・5540・7793)刊。