ガザ停戦決議 問われる米国の姿勢(11月27日付)
国連安全保障理事会で20日、日本を含む非常任理事国10カ国がガザ地区での戦闘を巡り、無条件での即時停戦と人質全員の解放を求める決議案を提出した。決議案は「パレスチナ人を飢えさせようとするいかなる取り組みにも反対する」とし、ガザでの戦争を「直ちに、無条件で、永久に終結させ、残っている全ての人質を直ちに無条件で解放しなくてはならない」と要求する内容だった。
国連安保理は常任理事国5カ国と、選挙で選出される非常任理事国10カ国で構成されている。拒否権を持つ常任理事国も4カ国が賛成した。理事国15カ国のうち14カ国が賛成票を投じたのだが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使したため、この決議は成立しなかった。
日本の山﨑国連大使は「決議が採択されれば、ガザ地区における人道支援の劇的な拡大に向けて強いメッセージを送ることができただろう」と述べ、アルジェリアの国連大使は「安保理と国連にとって悲しむべき日だ」と述べるなど、各国からは安保理が一致できなかったことに遺憾の意を表明する声が相次いだという。国際世論を反映することができず、人道に背く決定を行っている安全保障理事会は、平和のための国際的意思決定の機関として機能していない。それは核大国に責任があるが、今や中でもアメリカの責任が明白だ。
アメリカは国際世論から見放され国際的に孤立している。キリスト教の伝統が根強い国として知られるアメリカだが、保守派に影響力を持つキリスト教福音派の多くが大量殺戮をも辞さないイスラエルの強硬姿勢を支持しているとされる。もはやアメリカは人道に背く国との評価が広がるのをとどめることができないだろう。隣人愛を尊び、平和を願うキリスト教徒にとっては痛恨の事態が続いている。
第2次世界大戦後のある時期までは、日本ではキリスト教が人道的な社会の在り方を導いてきたと見なされ、アメリカを含む西洋のキリスト教に学ぶという姿勢をとってきた。しかし、平和と抑圧を巡る世界の宗教情勢は大きく変わってきている。今こそどの宗教も世界平和への責任を担う意思を明確にすべきだ。
宗教は人道にのっとり、平和をもたらす道を指し示すものであるべきだ。多くの子どもを含む犠牲者が後を絶たない事態を巡って、宗教の真価が問われている。諸宗教の枠を超えて、平和と人道を尊ぶ声を上げ行動することが求められている。