「闇バイト」
夏以降、首都圏で強盗事件が相次いでいる。手口の似た犯行が少なくとも十数件確認されており、40人以上が逮捕された。実行犯はSNS上に投稿された「短時間で高収入」「簡単な運搬の仕事」などの甘い言葉に誘われたいわゆる「闇バイト」だ◆高齢者を暴行し、金銭を奪うといった極めて悪質な犯行は決して許されるものではない。同種の事件の公判ではいずれも厳しい判決が下されたが、至極当然といえる◆しかし問題の背景にある若者の貧困化や、ギャンブルや課金制ソーシャルゲームなど「依存症ビジネス」の存在を無視するわけにはいかない。加害者個人の問題として処理するのではなく、社会全体で取り組むべき課題だろう◆行政も本格的に対策に取り組み始めた。警視庁はSNS上で情報を発信し、警察への相談を促している。NPOなどが開く相談窓口も周知されてきた。数週間前まで求人サイトに散見された闇バイトとの関係が疑われる求人情報も随時削除されている。ほんの小さな一歩ではあるが、闇バイト根絶に向けて社会が動き出した◆次の一歩として宗教者のアクションを期待したい。SNSでもお寺の掲示板でも手段は問わない。とにかく広く市民の目の届く場所で命の尊さを訴えることに意義がある。安易に他人を傷つける犯罪が跋扈する中、宗教者が声を上げなくてよい道理はないはずだ。(奥西極)