SNSと選挙 時代の大きな変化を象徴(11月22日付)
アメリカ大統領選挙がトランプ氏の大勝利で終わり、議会による不信任、失職で注目されていた兵庫県知事選挙は斎藤元彦・前知事が県民の信任を得て再選された。
政治資金パーティーに関わる裏金問題や旧統一協会との不透明な関係を背景とした自民党の総裁交代と総選挙における敗退にまでさかのぼれば、選挙の季節が一つ終わったという印象がある。
トランプ氏の大統領就任は1月20日でまだ2カ月あるが、すでに世界は予想されるアメリカの変化を前提に動き始めた。日本国内では少数与党としての自民党が、対米関係の展望の不透明さも不安材料に抱えつつ、真価を示すことを求められている。
多くの国民を驚かせたのは、マスメディアの批判の的になった斎藤知事の逆転大勝利だろう。トランプ氏の選挙戦と単純な比較はできないが、二つの選挙を通じて何かが変わった、という印象は深まった。
SNSの功罪をここでいちいち検証するわけにはいかないが、メディアの報道を総合すると、知事選では若年層の政治参加を促す効果をもたらしたようだ。選挙までのスキャンダラスな経緯が影響したにせよ、前回の選挙より投票率は15%近く上回った。民意はそれだけよく反映した、ということになる。
ただし真偽不明の情報などが出回ったことも指摘され、SNSにリードされる選挙の危うさを感じさせた。トランプ氏の2016年の選挙では大量のフェイクニュースがSNSで拡散したといわれる。Qアノンの陰謀論がネットで広まり、同氏が落選した20年の選挙ではトランプ陣営が選挙不正をアピールし、市民が連邦議会議事堂を襲撃。アメリカの民主主義の終わりの始まりを予感させた。
今回の選挙戦では「X」のオーナー、イーロン・マスク氏がトランプ氏を全面支援し、当選後、マスク氏には政府の要職が提供されることになった。一方でXを警戒する動きは徐々に出てきており、利用を法的に禁じたブラジル(のち禁止解除)のほか、英紙ガーディアンがXへの記事投稿を停止するなど、毎日新聞によると海外メディアや国際機関にも忌避が広まっているという。
日本でもネットリテラシーの重要性が指摘されて久しい。だが、闇バイト問題などをはじめ情報環境の変化に社会は追い付いていない。今後も我々市民は右往左往させられるだろう。その中で、宗教的叡智がどのような意味を持ってくるか。IT時代の宗教の存在意味も問われている。