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消えゆく他者への共感 その先に見える世界は?(5月10日付)

2024年5月15日 10時32分

19世紀フランスの政治思想家トクビルの『アメリカのデモクラシー』は昔、学校で民主主義を学んだ時、よく耳にした文献だ。

「(米国は)地上のいかなる国よりも、また歴史に記憶されたいかなる時代にもまして(略)平等」と同書に記されているように、19世紀半ば近い米国は平等志向の強い国だったようだ。だが、当時の米国南部には奴隷制があった。

トクビルは南部の奴隷制は廃止せざるを得ないが、白人の誇りで黒人への白人の嫌悪は逆に増大すると予言していた。現代に連綿と続く人種主義の根深さを見抜いていたのだろう。トクビルが見た平等も、白人だけのものだった。

だが、米国は建国以来背負う「負」の歴史的遺産を、ハワイ生まれでアフリカ系米国人のオバマ大統領誕生でようやく克服したかに見えた。それをぶち壊したのがドナルド・トランプ前大統領だ。トランプ氏は2011年からオバマ氏を「アメリカ生まれでない」と執拗に中傷した。自己の野心から、米国人の心の奥底になお潜む黒人大統領を望まない差別意識を刺激する狙いといわれた。

社会的マイノリティーに共感し寛容であろうとする思考をポリティカルコレクトネスというが、トランプ氏はそれには目もくれず、移民やムスリム、性的少数者、障害者らへの憎悪や差別を喚起する言葉を投げつける。それに熱狂するのは、グローバル化に伴い移民・不法移民に職を奪われる、と怒りを募らせる白人男性や経済格差の拡大で没落する中間層、あるいは栄光の歴史を刻んできた米国の国際社会での影響力低下に強い不満を持つ人々らだとされる。

実業界で成功したトランプ氏の「米国を再び偉大に」という誇大な言葉がアメリカンドリームの再来を夢見る人々を夢中にさせる。昨今、世界で選挙のたびにナショナリズムをあおるポピュリズム的な政治勢力が増長し、社会的な分断を深めているが、トランプ氏はその象徴的な存在だろう。同じような思想や人物を見つけ出し、容易に群れることができるSNSの発達により、その傾向は一段と強まる。いずれ排除を競う偏狭な世の到来を予感させるが、そのような時代潮流の中、国境や人種の違いを越え、互いに共感し合う心をどう盛り立てていくか。

カギは宗教にある。ただ、米国のキリスト教は国が「負ける」経験をしていないため楽観的で自己肯定的な側面が強いという。福音派はトランプびいきだ。今秋「もしトラ」が現実になれば、研究を深めたい要素の一つである。

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