やさしいことば
NHKラジオで9月30日から「やさしいことばニュース」が放送されている。専門用語をできるだけ使わず、外国人や子ども、障害者にも分かりやすい表現と内容を心がけているという◆4日に行われた石破茂首相の所信表明演説は「総理大臣になって初めて、国会で話しました」、地方創生のための交付金倍増は「地方の産業を元気にするために、国が地方に配るお金を2倍に増やす」といった具合。用語に説明を加えるだけでなく、句読点の間を長くとって原稿が読まれている◆先日、日蓮宗総本山身延山久遠寺で式典の取材をした折、偈が現代語で読まれているのにはっとした。漢文の時は聞き流していた言葉が、意味を伴って頭に入ってきた。その感覚に驚くとともに、式全体の流れと意味を考えながら取材することができた◆同時に「由らしむべし、知らしむべからず」という『論語』の言葉が思い浮かんだ。全ての民に政策を理解させるのは困難なので説明する必要はないという意味だが、もっぱら説明責任を果たさない政治家を批判する時に使われる◆お寺の法要は難しい漢語の方がしっくりくるという声は今も聞かれる。分からないまま儀式をありがたがるか、易しい言葉で理解しながら参列するか、意見は分かれる。情報があふれ誰もが学べる時代を迎え、法要の在り方も岐路に立っているのかもしれない。(有吉英治)