文化を生む変化
観光シーズンの秋、京都の各寺社で特別拝観が開かれている。臨済宗大徳寺派大本山大徳寺の塔頭・真珠庵では一風変わった襖絵が公開され話題となっている。400年以上飾られる長谷川等伯らの作品に替え、漫画家やゲームクリエーターらの作品が襖を彩る◆山田宗正住職が数年前にこの計画を発表すると「日本文化を破壊する気か」など批判的な声も少なくなかったという。だが山田住職は「狩野派や土佐派がはやった京で、七尾から出てきた等伯は『田舎もん』とすぐには受け入れられなかっただろう」と、どこ吹く風◆様々な習慣を日本にもたらした中国黄檗宗の隠元禅師はテーブル(ちゃぶ台)なども伝えた。畳の上に膳を置き、上座と下座などに分かれ個別に食する日本で、円卓を囲む作法に、当時の人たちは目を丸くしたに違いない◆教えは不変とはいえ宗教すら様々なものを取り込み変化してきた。大乗仏教運動は釈尊時代の聖典をアビダルマ(論書)を通じて参究しつつ、新しい思想として展開した。その時々の社会的な課題が思想に反映されている◆ただ、今を生きる我々としては、何がエポックメーキングなのかは知る由もない。後の人がそれを判断することになるのだろうが、伝統建築の寺院で襖絵を漫画にするという「事件」が、お寺と参拝者の関係ひいては参拝文化の大きな転換点になったら面白い。(赤坂史人)