スマホのリスク
電話の歴史からコミュニケーション・ツール(道具)の変遷が見えてくる。19世紀後半に発明されてから100年に満たない間に、通信回線でつながる電話のネットワークは地球規模で構築された◆我が国では1890年に東京―横浜間で初めて開通。加入者数は東京で155人、横浜で42人だった。太平洋戦争が始まる1941年には100万人を超えるまでに普及し、戦後復興に伴い加速度的に増加した◆交換手が回線を接続する仕組みがダイヤル式に変わるのは26(昭和元)年からで、79年までに自動化が100%完了。60年代にプッシュホンが生産され、70年代は国際ダイヤル通話など多機能化が進み、2000年以降はインターネットによる高速通信が普及する(NTT電信・電話の歴史年表)◆携帯電話の登場でコミュニケーションの在り方は革命的に変わり、個々人が時空を超えてつながる情報交換が日常化した。多機能性のスマートフォンはセルフメディアと化し「ユーチューブ」の舞台は自ら役者やタレント、ミュージシャンとして演じるセルフスタジオとなった。私たちはネット空間というバーチャルな小宇宙と共に生きている◆だがスマホにはバッテリー切れと紛失という落とし穴がある。情報交換機能が集約されたスマホを失った瞬間に人は孤立する。これは現代人を襲う最大のリスクというべきだろう。(形山俊彦)