PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
墨跡つき仏像カレンダー2025

ブータンの映画から 「幸せ」と「近代化」とは(1月17日付)

2025年1月22日 09時17分

「お坊さまと鉄砲」という映画が話題になっている。人の幸せとは、社会の仕組みの在り方との関係は、そこに宗教はどう関わるのか、を深く考えさせる作品だが、タイトルから何を想像するだろうか。日本では上映が少なく、しかもかつて国民総幸福量との概念が話題になった仏教国ブータンの映画というだけでも興味深いが、表題の謎への物語展開がダイナミックで娯楽性にも富む。

舞台は、人々が村落共同体の中で貧しくとも互いに助け合ってのどかに生きる社会。そこへ2006年、国王が自ら王政を廃し、民主主義的な議会選挙が導入されることとなる。現実の同国の出来事だ。

役人は選挙のPRに躍起で、習熟のため模擬選挙まで計画。田舎の村でもその手続きが無理やり進められ、村人たちは大混乱となる。これを知った村の僧院の老師は、事態を正すために銃が必要だと言い出し、弟子僧がそれを入手しにいくという流れだ。

有権者登録に、自分の生年月日さえ「知らん。必要ないから」「選挙? 聞いたこともない」と言う人々。主婦は「選挙のせいで村はバラバラになり、支持する候補が違うことで子供までいじめられた」と嘆く。

役人の「全てが選挙のせいじゃない」との反論は、混乱は人間の問題であるという意味でとりあえず正しいが「民主的な選挙で皆が幸せになる」との弁に主婦は「これまでずっと幸せだった」と返す。「世界の人々が命懸けで手に入れた参政権なのに」には「今でも幸福なのに、そんなものに命を懸ける必要はない」と言い、観客の思考は深みに引き込まれていく。

選挙が象徴する「近代化」なるものに対して、模擬選挙で異なる候補者陣営に無理に分けられた人々が互いにののしり合い「あの人が当選すれば暮らしが良くなり、うちの子がいい学校に入れてもらえる」と利益誘導の見本のような場面は痛烈な批判となっている。近代政治に無知な人々の戸惑いよりも、無自覚にそれに流され、欲望拡大のままに本当の幸せの在り方を見失った先進国の人間にこそ、その矛先は向けられている。

「近代化」の呼び声に「それが仏教と何の関係がある?」と僧侶。老師が法要で銃を使って何をするのか種明かしはあえて伏せるが「現代文明や財産よりも素朴な暮らしの幸せ」といった単純ステレオタイプを押し付ける作品では決してなく、心和む驚きの結末は、宗教が昔から人々の平安を支えてきたことも強く想起させてくれる。

国家安全保障 国益と宗教の自由(1月15日付)1月17日

米のトランプ次期大統領がデンマーク王国の一部であるグリーンランドを買収するという考えを表明したことが波紋を呼んでいる。アラスカ買収など過去の例を挙げて解説されても「いま何…

30年経ても変わらぬ 被災者を苦しめる国柄(1月10日付)1月15日

東日本大震災の復興構想会議議長を務めた故五百旗頭真氏は、30年前の「1・17」阪神・淡路大震災の体験を「災害への対処を考える際の原点」と、著書『大災害の時代』で強調してい…

阪神大震災から30年 培われた宗教者の支援力(1月8日付)1月10日

新しい年を迎えたが、昨年元日に起きた能登半島地震の被災地の人々はどのような年賀状を書いたのか、あるいは書くこともできなかったのか、心が痛む正月だ。復興の遅れで放置された全…

追悼法要で表白を述べる神戸市佛連の善本会長(中央奥)

【阪神大震災30年】供養の継承決意胸に 神戸市佛連犠牲者追悼 「謙虚さ忘れず」誓う

ニュース1月22日
矢坂建人理事長を導師に営まれた法要

【阪神大震災30年】各青年会代表、犠牲者を追悼 神戸JBクラブ大震災逮夜法要 新井理事長ら参列

ニュース1月22日
教会内に青年僧の読経が響く中、焼香する遺族ら

【阪神大震災30年】たかとり教会・全日仏青有志 宗教超え冥福祈る 子の世代の僧侶も出仕

ニュース1月22日
このエントリーをはてなブックマークに追加