年少化する自殺 「助けて」と言える社会に(4月18日付)
2024年の小中高生の自殺者数は、統計のある1980年以降で過去最多の529人となったと厚生労働省が発表した。全体の自殺者数は前年より1517人減の2万320人と減少したが、職業別でも「学生・生徒等」のみが増加した。小中高生の内訳は小学生15人(前年より2人増)、中学生163人(同10人増)、高校生351人(同4人増)。男女比は男子が239人(前年比20人減)、女子が過去最多の290人(同36人増)で、女子中学生99人、女子高校生185人と女子中高生の増加が目立つ。
19歳以下の自殺の原因・動機は、学業や進路に関する悩み、学友との不和などの「学校問題」が272件で最も多く、病気の悩みや影響などの「健康問題」が164件、親子関係の不和などの「家庭問題」が108件と続く。子どもたちの相談窓口や団体には「死にたい」「生きている意味はあるのか」といった訴えや助けを求める相談が増えているという。
勉強や部活、いじめや親子関係など内容は様々だが、見えないところで社会の閉塞感や生きづらさを抱えている子どもが多いのではないかと指摘されている。政府は2023年に「こどもの自殺対策緊急強化プラン」をまとめ、自殺リスクの早期把握や支援などを進める。「こども・若者の自殺危機対応チーム」を都道府県などに設置する事業も展開している。
ある心理学者は「若い人の言う『死にたい』は『幸せになりたい』だ。自殺を止めるなら、自殺をやめろと言うのではなく、自殺の話をし続けるしかない。人は自分を語ることで人間であることを取り戻し、心を開く」という。インターネット上の「死にたい」という告白には宛先がない。「死にたいくらいつらい」と言いたいから、そう書いている。「助けて」と言いづらく、言うことが恥だと感じさせる社会が背景にある。
4年半前、神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性の嘱託殺人容疑で医師2人が逮捕された事件で、亡くなった女性の主治医は、女性が安楽死を求めることがあったと明かす一方、「彼女は少しでも長く良い状態で生きたいと最後まで治療法の情報を集めていた。人は死の直前まで生と死を見つめ続けている。こんな状態で生きていても仕方がないと社会から思われると、生きる意欲をなくしてしまう。どんな状況でも『生きる選択』ができる社会にしなければいけない」と語っている(20年7月30日付「京都新聞」)。宗教が目指すのも「助けて」と言える社会にほかならない。