ロゴセラピー 人間への限りない畏敬に基づく心理療法…エリーザベト・ルーカス著、草野智洋・徳永繁子訳
ナチス・ドイツの強制収容所を生き延び『夜と霧』の著者としても知られるオーストリア出身の精神科医ヴィクトール・E・フランクルが創始した心理療法「ロゴセラピー」、その理論と実践について体系的に説いた教本の邦訳版だ。著者はフランクルの第一後継者で、ドイツに研究所を開設し実践家・指導者としてロゴセラピーの理論化と普及に注力するエリーザベト・ルーカス氏で、基礎概念から実践方法までを丁寧に解説する。
ロゴセラピーは、どんな過酷な状況にあっても人間には生きる意味(ロゴス)があるという思想を根底に、人間を身体・心理・精神の3次元で理解し、とくに精神領域へアプローチする点で従来の心理療法とは異なる。
ロゴセラピストは、主に対話を通じ問題を抱えた相談者を解決に導くサポートをする。技法としては、心因となる症状の引き金と距離を置き、その引き金を無効とする「逆説志向」、自分の弱さなどを脇に置き、自己の外側と精神的に関わる「過剰自己観察消去」、自分や他人に対してより健康的で倫理的に価値のある態度への変更を促す「態度変換」を挙げる。それらを基に具体例と図表を交え、睡眠障害、依存症、うつ病など心の病の対応を説く。心の悩み相談に乗る機会が多い宗教者には参考になる一冊だ。
定価3300円、新教出版社(電話03・3260・6148)刊。