皇位継承の儀礼…佐野真人著
令和の皇位継承に際して発表した講演録1本、論考6本、新出資料の考証1本を加筆修正してまとめた。第3章では、皇位を象徴する三種の神器のうち、剣と玉を受け継ぐ儀式「剣璽渡御」の古例を考察する。令和では即位日の午前10時半に「剣璽等承継の儀」が行われたが、平安時代の剣璽渡御は夜間に行われていたという指摘がある。
確かに1155年の後白河天皇の践祚を記した『兵範記』には「白昼の儀に無き」と記される。しかし著者は1016年の後一条天皇践祚の時の日記類を分析し、渡御の実施は午後1時半頃の譲位の儀の直後とみられ「白昼の儀」が本来の在り方だったとする。
夜の儀に変化したのは1086年の白河天皇から堀河天皇への譲位からだと指摘。この時、昼間に皇太子となる儀式を行ったため剣璽渡御が夜にずれ込んだのではと推測した。そして堀河天皇の事例が譲位の儀式の先例とされ、剣璽渡御は夜に行うものと認識されるようになったとする。この先例の成立については、鳥羽天皇践祚が堀河天皇崩御によるにもかかわらず、白河上皇の命による「譲位」とされたことも関係しているという。
平安時代に5例しか記録のない践祚時の神鏡奉遷については、皇位継承よりも行幸に伴う儀礼と捉えるべきではとしている。
定価7242円、皇學館大學出版部(電話0596・22・6320)刊。