論集 修験道の歴史 全3巻…川崎剛志・時枝務・徳永誓子・長谷川賢二編
21世紀初頭における修験道史研究の成果と課題を概観できる論文29本を全3巻に収録した。修験道史全体の研究動向を網羅する論集は『山岳宗教史研究叢書』全18巻(1975~84年)以来、50年ぶりの試みだ。各巻の「解説」により、収録論文の研究史的意義がより明確となり、これからの論点も明に暗に読み取ることができる。2015年出版の『修験道史入門』との併読を推奨。
第1巻「修験道とその組織」では、本山派や当山派といった修験道教団の形成に注目するとともに、古来の山岳宗教・山林修行者との連続性と非連続性にも関心を寄せる。
第2巻「寺院・地域社会と山伏」では各霊山、各寺社、各村落の事例を通じて地方・在地における修験の活動実態に迫るが、それは個別の事例分析にとどまらず、修験道史全体の課題を念頭に置く。例えば、教団化の過程は大寺院による「上」からの統制だけではなく、山伏の横の結合など「下」からの組織化もあったという指摘がある。
第3巻「修験道の文化史」では文学・芸能・考古学・美術関係の論文を収録。熊野曼荼羅を類型化した基礎研究や、従来知られていなかった地方の役行者像の古例の紹介は重要な研究だ。
定価1巻6380円、2巻6270円、3巻6160円、岩田書院(電話03・3326・3757)刊。