無外如大尼 生涯と伝承 中近世の女性と仏教…中世日本研究所編
無外如大尼(1223~98)は、鎌倉円覚寺開山の無学祖元禅師の法を嗣いだ最初の尼僧で、京都尼五山筆頭の景愛寺の開山となるなど尼僧史、禅宗史上で重要な人物とされるが、その生涯は出自を含めて詳らかでない。
伝承の過程で武将安達泰盛の娘とされたり、別の尼僧「無著」や、桶の底が抜けて映っていた月が水と共に流れ出たのを見て悟りを得た岐阜・松見寺の「千代野」など他の人物の逸話と混同した伝記が編纂されたことで実際の姿が見えにくくなっていた。
その実像を明らかにすべく、中世日本研究所(モニカ・ベーテ所長、京都市上京区・大歓喜寺内)が最新の研究成果をまとめ、昨年に迎えた生誕800年の記念として本書を編纂、刊行した。同研究所女性仏教文化史研究センターのパトリシア・フィスター研究室長、原田正俊・関西大教授、米田真理子・鳥取大教授、バーバラ・ルーシュ・コロンビア大名誉教授、カレン・ゲーハート・ピッツバーグ大名誉教授らが様々な観点から伝記や史料をひもとき、出自や無学との関係、別人の逸話の混入理由などを詳細に考察する。
巻頭には円覚寺派の横田南嶺管長と宝鏡寺門跡の田中惠厚門主らが挨拶を寄せ、如大尼を勧請開基とする眞如寺の坐像の修理記録も収録する。英語とのバイリンガル出版。
定価4950円、思文閣出版(電話075・533・6860)刊。