大きな変動の背景 国外の宗教問題への関心を(5月8日付)
国際宗教研究所・宗教情報リサーチセンター(RIRC)が、開設25周年記念で昨年12月にミニシンポジウムを開催した。テーマは「正確な宗教ニュースをめぐって~AI時代を見据えて~」。国内宗教ニュースと国外宗教ニュースの2部構成で議論がなされた。
「ユーチューブ」のRIRCチャンネルで4回に分けて紹介されているが、見過ごせない指摘が一つなされている。国内の宗教ニュースに比して国外宗教ニュースに対する一般の関心が極めて乏しいことが、RIRCの情報発信を通して明確になったという点である。
RIRCが公開する各種のオンライン情報を分析した結果、この傾向が明らかにされた。具体的には「X(旧ツイッター)」のインプレッション数、RIRCチャンネルの視聴数、ホームページ上での各種のオンライン公開情報へのアクセス数の分析に基づいている。
最近の国内の宗教ニュースとしては、統一教会、宗教2世、浄土真宗本願寺派の新しい領解文などがあり、これらへの関心は比較的高い。ところが国外の宗教ニュース、例えばロシアのウクライナ侵攻に関わる東方正教会問題、イスラエルとハマスの衝突の背後にあるユダヤ教とイスラム教の問題となると、関心は極めて低い。マスメディアの報道も実際の武力衝突については多くなされるが、それに深く関わる宗教問題まで視野を広げたものは多くはない。
おそらくそれと連動しているが、日本の宗教団体による海外での支援活動に対する関心も低い。日本の宗教団体の一部は、国内で起こった災害だけでなく、国外の紛争に伴う各種の問題や災害に際して、様々な支援活動を行っている。義援金を送ったり、必要な人員を派遣したりしている。
これらに関しては宗教専門紙でかなり細かく報じられている。だが一般紙あるいはテレビ等ではめったに報じられない。宗教専門紙を読む人の数は極めて限られているから、大多数の人は情報そのものが得られていないことになる。
日本は宗教の動きが政治や経済に直ちに影響することが少ない国に属する。だが、米国、中東、南アジア・東南アジアでは、宗教の動きに無関心だと政治や経済、文化において生じている変化の背景を見過ごすことになりかねない。
少なくとも日本の宗教団体が国外でどのような活動を展開し、それはどのような問題意識に基づいているかの報道は、宗教専門紙が担わざるを得ない。SNSを利用しての情報発信の在り方については、積極的に試行錯誤を重ねていくべき段階になっている。