破壊の限りを尽くす 入植者植民地主義の国(2月5日付)
第2次大戦後、インドの独立をはじめ世界に脱植民地化が広がる中、イスラエルは逆に入植者植民地主義によって建国を実現した。通常、植民地は宗主国が資源や労力を搾取する形だが、入植者植民地主義は入植者が先住民に取って代わり、自分たちの国をつくる。
米国が代表的な例だが、当然ながらその建国は、排除された先住民の激しい抵抗に遭う。今も酸鼻を極めるパレスチナ紛争の核心はそこにあるが、紛争の本質がイスラエルの植民地主義にあっても、特にキリスト教圏の米欧社会はそれを認めない。パレスチナは神からユダヤ人に与えられたという固定観念からだ。イスラエル人の多くも、紛争は自分たちの永遠の祖国を異民族の敵意から守る戦いと確信しているようである。
加えて、欧州での長きに及ぶ迫害、とりわけナチスによるホロコーストの体験が、イスラエル批判を全て「反ユダヤ主義」と決め付け封じ込める力を与えている。イスラム組織ハマスの襲撃から1月の停戦合意まで1年3カ月間、イスラエルがガザ地区で行ったためらいのない破壊と大量虐殺は、そうした要因が重層的に作用している。ガザでは約4万7千人が死亡、建物のがれきに埋もれるなどの行方不明者を合わせ犠牲者は6万人を超え、その7割は女性と子どもという。200万人以上が家を失ったが、家屋や公共インフラなど生活基盤を徹底的に破壊し、避難民が戻れなくするのが建国以来、難民の帰還を拒否しているイスラエルの手法とされる。
昨年11月、ハマスの指導者と共にイスラエルのネタニヤフ首相らに国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を出した。首相らの容疑の一つが、戦争遂行の手段としてガザ住民を飢餓に追い込んでいることとされた。イスラエルはヨルダン川西岸地区でも「対テロ戦争」を強化し始め、入植地を拡大、抵抗するパレスチナ人約800人を殺害したという。イスラエルは、ハマスせん滅を口実にパレスチナ全土からパレスチナ人を排除することが最終目的だと一部で疑惑が指摘される。強固なイスラエル支持のトランプ米大統領が先日、ガザ住民をヨルダン、エジプト両国が受け入れるよう求めたのも、それと関係すると見るのが自然だ。
歴史をたどれば、ヨーロッパでのユダヤ人差別がイスラエル建国の遠因となったが、自由と平等、民族自決が国際ルールとして定着した今、力の弱い民族が流浪の民にされかねない。その理不尽とどう向き合うか。宗教者も避けることができない難題を突き付けられている。