PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR

小欲知足の心 欲望追求から減速への転換(1月31日付)

2025年2月5日 09時23分

20年前、ケニアの環境副大臣だったワンガリ・マータイさんがノーベル平和賞を受賞した。グリーンベルト運動(植林活動)を通じて環境保護と民主化へ取り組んだ功績が評価され、環境分野として初、アフリカの女性としても史上初の受賞として話題を呼んだ。マータイさんの活動は地球規模の環境保護運動として世界に広がった。原動力となったのは「もったいない」という日本語である。

受賞の翌年、来日したマータイさんは、日本で「もったいない」という言葉に出会い、この一言にごみ削減や再利用、再資源化といった基本となる活動と、地球資源への尊敬の念が込められていることを知って感銘を受け、次世代へのメッセージとして世界に発信することを決意した。「MOTTAINAI」はSDGsの先駆けとなり、地球環境に負荷をかけない循環型社会の構築を目指す運動として様々な取り組みを生んでいる。

マータイさんの遺志をつなぐ人たちの中にブラジルの環境・気候変動大臣を務めるマリナ・シルバさんがいる。アマゾン奥地の貧しい家庭に生まれ、大学卒業後は環境保護と労働組合運動に身を投じ、上院議員に当選。熱帯雨林保護の法整備や温室効果ガス排出防止を目的とする基金の創設に尽力し、環境分野のノーベル賞とされるゴールドマン環境賞や、優れた環境活動家に贈られるソフィー賞などを受賞した。地道で根気のいる環境保護活動を継続していく上で、理念を象徴する言葉を世界の人々が共有する意味は大きい。

提案したいのはマータイさんに倣い新しい言葉を発信することである。経済成長を促す原動力となってきた資本主義の本質は、飽くなき欲望の追求であろう。地球温暖化や気候変動の進行を抑制するためには、人間の内なる欲望を制御する知恵が求められる。そうであるなら、どこまでも成長を追い続ける生き方を反省し、新しい文明論を樹立するための理念や、加速主義を転換して減速主義へ導く新たな一言を宗教者が提唱してはどうか、ということだ。

釈尊の最期の教えである『遺教経』に、諸仏が覚った「小欲・知足・寂静・精進・不妄念・禅定・智慧・不戯論」の八つの徳目(八大人覚)が示されている。現代文明の加速主義に対して、私たち一人一人が日常生活の中で実践できる行動があるとすれば、受けたもてなしで満たされたことへの感謝を込めて箸を置く「ごちそうさま」の心、あるいは欲を少なくして足ることを知る「小欲知足」の心がけではないだろうか。

多文化共生時代 公教育における宗教(1月29日付)1月31日

昨年6月に米国ルイジアナ州で公立学校にモーセの十戒の掲示を義務付ける法案が成立した。これに対し保護者らが国教樹立を禁じた憲法修正第1条に違反すると提訴し、連邦地裁は11月…

トランプ氏就任演説 価値観の混乱を象徴する(1月24日付)1月29日

米国のトランプ新大統領は、就任演説で「アメリカ第一主義」を旗印に掲げ、多くの新政策を断定的に打ち出し、「力強さ」を印象付けた。不法移民の滞在を認めないのはまだしも、高い関…

戦争とAI 血の通った倫理的判断を(1月22日付)1月24日

AI(人工知能)を搭載した精密誘導兵器が初めて本格使用されたのは、今から35年前の湾岸戦争の時であった。この兵器には、利口で賢いという意味のスマートという形容詞が冠せられ…

上任式で「おことば」を述べる藤座主

道心もって教え敷衍を 第259世天台座主 藤氏、上任式で決意

ニュース2月5日

人類の幸福とは何か? バチカン教理省 AIの倫理問題検討 自律型致死兵器、ディープフェイク等の危険

ニュース2月5日
竒山明憲宗務長

築地本願寺宗務長に竒山氏 学事部長、伝道部長を歴任

ニュース2月5日
このエントリーをはてなブックマークに追加