在留外国人の増加 正念場迎える日本の宗教(1月3日付)
近年、日本では在留外国人の増加がとみに著しい。2024年6月末の統計では、在日韓国・朝鮮人など特別永住者を含めると、359万人にも上る。在留外国人の大半を占めるのが中長期在留者であるが、その国籍は中国、ベトナム、韓国が大半を占め、フィリピン、ブラジル、ネパール、インドネシア、ミャンマーと続く。公的に移民という言葉を用いないが、実質的には移民と言ってよい。
異国で暮らしていく上で、在留外国人の多くは自らの宗教を心の支えにしている。彼らは自国の宗教を帯同してきているのである。そのため、同じ仏教やキリスト教であっても、在来の日本式寺院・教会にはなじめず、自国の言語による説法や儀式をしてくれる寺院・教会を作ることになる。例えば、ベトナム仏教もまた大乗仏教であるが、道教や儒教とも混交し、ベトナムに土着した仏教となっている。在日ベトナム人もそうした信仰生活になじんできているため、日本でもベトナム式仏教寺院を求めるのである。
これら在留外国人の宗教施設は、在留外国人コミュニティーの精神的中核としての役割を果たしている。イスラム教のモスクやマスジド(礼拝所)は、ムスリムたちの強固な信仰的アイデンティティーを形成している。その一方で土葬墓地建設を巡る問題など、各地で異文化摩擦も起きている。このような問題は、単純に多文化共生の推進だと唱えるだけでは済まないだろう。何より地元住民の権益を第一に考えながら、信教の自由を踏まえつつ真剣に問題に向き合い、その解決に取り組んでいくことが求められる。
在留外国人の諸宗教の活発な状況に対して、日本の諸宗教は信者離れ、教勢低下に苦渋している。その意味で、彼らの宗教の在り方からいろいろと学べるところがあるはずだ。というのも、これらの宗教は異国で暮らす人々にとっては、情報交換や相互扶助の場や駆け込み寺的な機能も持ち、生活に密着したものとなっているからである。
また日本の諸宗教が、日本を選んで来てくれた外国人に対し、もっと門戸を広げるようにすることも重要である。幸い伝統仏教諸派をはじめ、新宗教やキリスト教は豊富で魅力的な救済資源を有している。今後の日本宗教は、どれだけ在留外国人に救いを提供し、どれだけ彼らに信奉してもらえるかによって、その存続・発展・深化の方向も決まってくるのではないだろうか。海外布教の現場は今や国内にあると言ってよい。これからが日本宗教の正念場である。