生命の発露
演劇や音楽、絵画、文学などあらゆる芸術活動は、人間の内なる生命活動を外に現す「表現」である。生命の発露と言うべき「表現」は、人間の最も平和的な創作活動であり存在行動だと言ってよい。たとえ激しい暴力を演じ、また描いたとしても、それが「表現」である限り直接的な暴力や他者の否定ではない◆この世で「悪」と呼ばれるものは、存在しているものを否定することだとするならば「表現」の世界は、たとえ存在を否定する行為や意味を表す場合でも「悪」とはならない。もちろん「表現」を装った暴力や他者を否定する行為が容認されるものでないことは言うまでもない◆演じることや描くこと、音を発し文章を書くことに生命を燃焼させている表現者は、そこに生きている意味があることを感じさせてくれる。生命の発露としての「表現」という営みの中に人生があり、生きる意味があることを教えてくれる◆人生の意味は内なる生命活動を「表現」として解放し「生きる」を実現するところに実感されるものだとすれば、それは自己実現の行為と呼べるだろう。では他者と共に生きる上で自己に求められるものは何かといえば、自分の生命活動と同様に「生きる」を実現する他者の生命活動を受け入れることに他ならない◆「生命の表現」を互いに認め合うところに自他共存の場が生まれてくる。(形山俊彦)