米世論の20年間の変化 増えた「無宗教者」のゆくえ(10月2日付)
21世紀に入ってから、世界は大きく変化した。アメリカの同時テロでニューヨークの世界貿易センタービルが崩壊した映像は記憶の中に深く刻み込まれている。大きな変容の予兆と感じた人も少なくないのではないか。それからおよそ四半世紀、変化は予想の範囲を超えて確実に進んでいる。
アメリカの世論調査研究組織ピュー・リサーチセンターが設立20年に当たって、この間の世論の動向をまとめたリポート(同センター編集者ジェン・ハットフィールド氏による)を公表した。米国内のデータだが、日本を含め世界に共通する傾向も示される。
まず挙げられるのがメディアの変化だ。2004年の平日日刊紙の発行部数は約5500万部であったが、22年には2100万部までに減少し、ニュース環境においてソーシャルメディアの台頭が著しい。リポートによれば、傾向としては新聞、テレビ等の報道の信用は低下しているが、それでもSNSより報道機関の情報を信じる方が依然として多いという。連邦政府や議会、最高裁判所など公的機関も信頼の低下が目立つ。新型コロナパンデミックで「専門家」への不信感が一般的に見られた。
国勢調査によると、20年間で米国の人口は14%増加したが「アジア系、ヒスパニック系、黒人」の増加率が高く、白人の人口比は04年の68%から22年には59%に変わった。合衆国議会も人種的、民族的多様化が進み、女性議員数は過去最高になった。
同性婚合法化等の支持の高まりという流れの一方、気候変動対策や銃規制、中絶に対する考え方は政党支持と連動し二極化していると指摘される。対外的関係ではイラン、イラクに代わって中国が最大の仮想敵国になった。
宗教に関しては、無神論者、不可知論者、「特に信仰はない」という自己認識を持つ「無宗教者religious “nones”」に分類される人々が約28%を占めるに至り、プロテスタントに次ぐ「最大の宗教グループの一つ」として比率は近年安定しているという。ただ、組織化された宗教には属さないものの「何らかの宗教的、精神的信念」を抱く者は多い。
以上、ピュー・リサーチセンターが指摘する20年の変化はあくまでもアメリカの特殊性が根底にある。とはいえ別の世界の話ではない。日本と欧米では文化的、歴史的差異が少なくないが、グローバリズムの圧力のもと、欧米のスタンダードに沿った変化や改革が今後進んでゆくであろう。宗教界はその意味と影響を慎重に見定めておく必要がある。