第2次政権の宗教化? どうなる米の「宗教の自由」(2月19日付)
トランプ大統領は7日、大統領令によってホワイトハウス信仰局(Faith Office)設立を発表した。局長には福音派のテレビ伝道者で「繁栄の神学」の信奉者であるポーラ・ホワイト氏(58)を任命した。
アメリカは合衆国憲法修正第1条で「国教樹立」を禁じるが、国家と宗教の関係は、国家の宗教的中立性を保つフランスの政教分離(ライシテ)とは異なる。このたびの大統領就任儀式もキリスト教的な要素を色濃く残している。
大統領府には「信仰局」の前身組織「信仰に基づく近隣パートナーシップ」事務所があった。第1次トランプ政権下では「信仰と機会イニシアチブ」センターに改組されたが、バイデン政権で復活。しかし再選されたトランプ氏は「有害な大統領令」に基づく組織として解散させていた。「信仰局」に関する大統領令は、宗教団体等は「家族を強化し、コミュニティーを活性化するため不可欠」であり「そのような組織と連携する機会を歓迎する」(第1条)と明記。反ユダヤ主義、反キリスト教などの偏見と闘う、としている。
別に「反キリスト教的偏見」を根絶するため司法長官の下に「専任チーム」を設けると発表した。ロイターによると、偏見・差別根絶の例としては司法省や内国歳入庁、FBIに言及したという。
世論調査ではトランプ氏は米国民から宗教的な人物とは見られていなかった。氏に期待する福音派との政治的関係はかねて指摘されてきたが、今回の選挙戦の狙撃事件以降、神の加護について語ることが目立つ。事件が宗教的体験になったのか第三者には分からない。
しかし分裂を深める社会の一方からの強力な支持は大統領再選に有効に働いた。「反キリスト教的偏見の撲滅」や「信仰局」開設、米キリスト教界の一部で異端視される特異な存在のホワイト氏(旧統一教会とも親しい)の責任者起用はその延長線上にある。
偏見撲滅や信仰局の活動はホワイトハウスの発表や各種報道を見る限り国内に向けられている。だが第1次政権のポンペオ国務長官が「宗教の自由の保護は外交政策の中心」と断言する国柄。外交圧力を効果的にするため2020年に「国際宗教の自由または信仰同盟(IRFBA)」も組織した(加盟38カ国。日本は「友人」)。
必ずしも全て同調はできないトランプ流の「宗教の自由」の基準は海外にも向けられる可能性は大きい。米国で重みを増した「宗教の自由」がどのような形をとるか。日本も干渉的圧力と無関係とは言い切れないと危惧される。