問題意識共有を 医療従事者らの宗教的関心(7月10日付)
宗教者と医療やケアや福祉の関係者の交流の機会が増えている。2000年代前半に立ち上げられた団体に、仏教看護・ビハーラ学会があり、続いて、日本スピリチュアルケア学会、日本臨床宗教師会などが立ち上がってきている。宗教系の大学でこうした分野の教育・研究に取り組む例も少なくない。
一方、医療系の学会でスピリチュアリティーに関心を持つところも増えてきている。
すでに1977年に日本死の臨床研究会が発足しているが、90年代になってから、日本臨床死生学会、日本ホスピス・在宅ケア研究会、日本エンドオブライフケア学会などあり、看護学でもこうした分野の教育に取り組む研究者は増えている。宗教と福祉に関わる学会等も健在だ。
病院、在宅ケア、地域ケア、被災地支援といった領域で、医療やケアや福祉の関係者と宗教者やスピリチュアルな動機を持つボランティアが交流し、協力し合う機会もまた増大している。専門職・ボランティア・宗教者が相互に交流して、それがケア活動の充実をもたらす事態がしばしば見られるのだ。
これを宗教活動の変化という視点から捉え返すと、共通の信念や生活空間を分け持つ共同体での活動から、痛みやニーズに沿った関係の中での活動への変化と見ることができる。宗教者は信仰を共有する共同体をケアするというのがかつての役割だった。もちろん今もその役割は続いている。だが、併せて、痛みやニーズのあるところで新たな接点をもって、そのときどきのつながりを形づくっていくというケースが多くなっている。
他者の痛みやニーズに即して、自らも問われているという姿勢でケアする。そのために耳を傾けることが求められている。「寄り添うケア」とはそういうことだ。
他方、医療やケアや福祉の関係者は、かつてはそれほど関心を持たなかった宗教的な考え方やスピリチュアリティーに問題意識を持つ傾向が強まっている。ケア活動に関わっている多くの人々が宗教やスピリチュアリティーに関心を持っているのだが、では、宗教団体はそれに応じようとしているだろうか。
大学でいうと仏教学や神学や神道学、さらには哲学や倫理学などの教育分野でも、ケアや臨床、傾聴や対話や寄り添いといった事柄が組み込まれる例が多くなってきている。宗教者や宗教団体がこうした動向に触れることで、学ぶことも多いはずだ。