東洋学術研究 第63巻第2号…東洋哲学研究所編
東洋哲学研究所が5月に「AIと信仰・宗教・思想」をテーマに開いた第38回学術大会シンポジウムがまとめられている。登壇した4人の発表およびパネルディスカッション、質疑応答を所収。AI(人工知能)の技術的側面や技術的進展における課題、人間とAIを隔てる壁、AIを鏡とした人間の知性や感情についての見直し、宗教や信仰への影響などに関し問題提起されている。
こうした議論は、人間の生や本質についての問い直しにもつながっていく。濱田陽・帝京大教授は「人間の非アルゴリズム的側面は今日のAI、アンドロイド、生命工学ではとらえ難い。アルゴリズム的なAIで答えを出す側面と、そうではない側面を合わせてどう考えるのかが大きなテーマになってきます。そのため哲学、思想、宗教の意義はAIが進めば進むほど深まってくるという見方ができます」と指摘している。
巻頭特集は「池田大作先生と東洋哲学研究所」。「文明間の対話」の展開、機関誌『東洋学術研究』を通じた発信、法華経原典の写本刊行、世界各地での「法華経展」開催の四つの同研究所の事業に着目しながら、2023年に死去した同研究所の創立者・池田大作を「一人の学術者」として捉え直そうと試みている。
定価1400円、東洋哲学研究所(電話042・691・6591)刊。