H1法話大会の新理事長 企画の認知向上へ奔走
奈良県生駒市 真言律宗長弓寺円生院 池尾宥亮住職
2年に1回、観客の前で法話を披露し「もう一度会いたいお坊さん」を選ぶ「H1法話グランプリ」実行委員会の新理事長に就任した。2025年12月頃に開催予定の次回大会に向けて準備を進めている。
超宗派の若手が集まり10分以内に法話を披露するこの企画は6年目を迎え、年々知名度を増してきた。グランプリを選ぶのはあくまで「方便」で、宗派の教義に沿った正統な法話を展開する。
後援依頼では行政との折衝も経験した。公的機関の会場借用は政教分離の観点から制限が多いことなど、社会の中での宗教の立ち位置を知った。また企画に携わったことで他派の僧侶らとの交流も生まれた。
師と弟子、先輩と後輩の関係が厳格な仏教界ではH1は「イロモノ」として見られることもあり、登壇者を集めるのに苦戦する年もある。若手の僧侶からは「参加してみたいが師僧や周囲の目が気になる」などの声が聞かれるという。取り組みを理解してもらいたいと、各宗派の布教師会などで指導をしてきた年配の布教師からの意見も集めたいと考えている。
昨年は法話の話者を会場の画面に映し出し、字幕を同時に表示するシステムを開発した。耳の不自由な人にも広く開いていこうと挑戦を続けている。
自坊は奈良県生駒市の真言律宗の古刹。本堂は同市で唯一の国宝建造物だ。自身は関西の私大を卒業後、高野山の専修学院で修行。大本山清荒神清澄寺(兵庫県宝塚市)で坂本光謙法主の下で天堂番として仕えた。
坂本法主は法務を生活の中心に据えて厳格に体調管理をし、365日修法を欠かさないという。
「『皆のおかげで拝ませてもらえている』と感謝の言葉をもらった。僧侶人生の始まりに、その後ろ姿を日々拝ませていただいた。この3年間が自身の僧侶としての基礎となっている」と話す。
法話に励む一方で、真言僧にとっては真摯に拝むことが重要だと考える。真言宗の各山から高僧が出仕して営む後七日御修法にも、役僧として2度出仕した。
大学卒業後に徒歩で四国遍路に挑んだ際、ある篤信の女性が車で追い掛けてきて「お接待」を手渡してくれた。僧侶には祈りが託されていると強く実感した経験だった。
「法話も祈りも形だけではなく“心から”であることが大事ではないか。国家や皇室の安泰、人々の毎日の安寧も祈りたい」と話す。
(磯部五月)