能登で増える関連死 阪神大震災の教訓生かされず(2月7日付)
能登半島地震の関連死が増え続け、300人に近付いている。地震と津波による直接死228人をはるかにオーバーしたのは、阪神・淡路大震災の教訓が無視され、自然災害より人災と言える面が大きい、と被災しながら住民の支援を続ける地元の僧侶が指摘する。
関連死は発災1週間後くらいから出始めたが、1年以上たっても続くのは復興の遅れ、いや水道を含むインフラなどの復旧さえ満足に進んでいない公的施策の不十分さ、災害対応システムの欠陥という問題が大きい。
NHKの番組などで具体的な例が紹介されていたが、当初や9月の水害後の避難所の環境が劣悪で、水がなくてトイレが使えず、我慢するために水分を取らないので脱水症状となり衰弱した、狭い体育館で床に雑魚寝や横にさえなれない状態でエコノミー症候群を発症した、など悲惨な状況だ。
あるいは県の主導で2次避難が進められたが、行く先の宿で宿泊客が優先され部屋が不足、医療的ケアのない場所を何回も転々とさせられた挙げ句、心筋梗塞で亡くなったなど、どう考えても対処が杜撰だ。同じように災害が多発する台湾で、先般も地震発生から数時間でプライバシーにも配慮した衛生的な避難所が開設されたのと比べると、誠に情けない。
国は、基本的には災害対応は自治体の業務、という姿勢で、与党政治家が「手厚い支援」を口にするのが薄ら寒い。例えば避難所の運営は市町村の役割とされているが、当の自治体職員も多くが被災者であり、仕事量も限界を超えた。そこで民間の支援が必須となるが、県知事は何を迷ったのかボランティアを阻止する発言を繰り返し、批判が集中した。現に、被災者の健康管理を支える医療系NPOが現地入りに支障を来し、食糧支援や身の回りの手助けをしようとした宗教者らのグループも断念したり遅れたりするケースがあった。
関連死は阪神・淡路大震災や東日本大震災でも何年たっても相次いだ。原発事故に襲われた福島県では津波による直接死より長期の避難生活に起因することの多い関連死がかなり上回った。政府の半ば強制的な避難指示、生活へのケアの手薄さという行政や社会の仕組みによる人災だった。
先に30年を迎えた阪神・淡路大震災の被災地神戸で活動を続けてきた住職は、慣れない復興住宅での孤立死などかつての教訓に今後、能登でも留意する重要性を訴えた。せめて被災者の心のケアやコミュニティー再建に宗教者が力を尽くす必要があるだろう。