スフィア基準を
アフリカ・ルワンダの難民キャンプで多くの人が亡くなった反省から、被災者の人道的に守られるべき最低条件「スフィア基準」が設けられた。スフィアとは球体を意味し、地球上のどこでも適用されるようにとの願いが込められている◆1年前の能登半島地震で被災したある僧侶は「指定避難所には毛布もなく、座布団を数人で分け合って寒さをしのいだ」と明かす。こうした状況は30年前の阪神・淡路大震災とほぼ変わらない。あの時も多くの人が体育館などで雑魚寝を余儀なくされた◆地震多発国のイタリアでは官民が共同して被災地の救援に当たる。災害時には全国各地の拠点から資材、物資が運び込まれ、すぐにテントやコンテナで生活できるようになっている。エアコンやシャワーなどの設備もある。さらに温かい食事が提供され、被災者が並ばないように巨大なテント内にいすとテーブルを設置し、ボランティアが配膳するという徹底ぶりだ◆こうした体制の整備は1980年、2700人以上が犠牲になった地震の経験からだという。登録する約30万人のボランティアと国が協力する体制を構築している◆同じ地震多発国にもかかわらず、日本が抜本的な改革、対策を講じてこなかったことは残念でならない。官民で被災地を支援し、スフィア基準が守られる体制の構築を急ぐ必要がある。(赤坂史人)