重責全うへ精進重ねる
真言宗大覚寺派大本山大覚寺 山川龍舟門跡(73)
弘法大師御誕生1250年の記念すべき年に、大本山大覚寺第65世門跡に就任した。
自坊の地蔵院(広島県福山市)は、朝鮮通信使の寄港地で知られる瀬戸内の鞆の浦にある。1981年、住職に就いた際、本堂は老朽化のため建て替える必要があったが、思うように浄財を集められなかった。檀家はほとんどが漁師で、気性の荒い人からは罵声を浴びせられたこともあった。「死ぬまでに建て替えられたら」と気を取り直し、まずは檀家らとの信頼関係の構築に努めた。
酒席には必ず出席し、酒を酌み交わして親睦を深めた。すると3年後には本堂の建て替えが実現し、完成時には檀家総代と抱き合って泣いたという。その後、庫裏、信徒会館の建て替えにも着手し、住職になってから約40年の間に境内整備に大きく尽力した。
兼務住職を務める福禅寺(同市)は、朝鮮通信使が残した貴重な書を所蔵している。2017年にユネスコ「世界の記憶」に登録されたが、書は傷みがひどく修繕が必要だったため、クラウドファンディングでの資金調達に初挑戦。見事に成功した。
07年には黒髪寛延内局に入局し、財務部長を務め、本山の伽藍を維持するための苦労を知ったという。
門跡就任に当たり「大覚寺は嵯峨天皇と弘法大師の御遺跡であり、いけばな嵯峨御流という大切な文化を継承する場所でもある。その門跡に選定されたこと、畏れ多く身に余ることと受け止めている。浅学非才の身ですが、さらに精進してまいりたい」と誓った。
(日野早紀子)