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漂流ポスト寺で継承 故人への思い受け止め(7月24日付)

2024年7月26日 09時37分

東日本大震災で大切な親族、友などを失った人々のやり場のない悲しみを受け入れてきた岩手県陸前高田市の「漂流ポスト」がこのほど、同市の臨済宗妙心寺派慈恩寺に引き継がれ、赤いレトロな郵便ポストが同寺に移設された。

故人への思いをつづった、しかし決して名宛先に届くことのない手紙が流れ着くところという意味を込めて「漂流ポスト」と名付けられた。地元でカフェを営んでいた赤川勇治氏が震災から3年後の2014年3月に「亡き人への思いを文字にして少しでも悲しみを和らげてもらえれば」と始めた。

カフェの庭に設置された古い赤の郵便ポストには、失った父母や夫、子ども、孫などへの切々とした思いをつづった手紙が届けられ、その数は10年で千通を超えた。「漂流ポスト」に材を取った映画も製作された。

しかし、ポストの「管理人」の赤川氏も70代半ばの高齢者になったことに加え、離れた施設にいる認知症が進んだ母の介護をしなければと、ポストの閉鎖を考えるようになった。

「管理人」を引き継ぐことを申し出たのは、同じ陸前高田市の広田半島にある慈恩寺の古山敬光・先住職。これまで毎年秋彼岸に「漂流ポスト」に届いた手紙の供養を引き受けてきた縁があり、今もポストを心の支えにしている人たちのために、と引き受けた。

古山氏自身も身近な親族を3・11の津波で失った。浜から600㍍ほど離れた高台にある慈恩寺は市から避難場所に指定されていて海寄りの住民がすぐに避難してきた。6㍍の防潮堤を越えて津波が押し寄せたのは30分ほどたってから。寺の本堂床下まで迫った津波で家を流された人々が慈恩寺を頼ってさらに続々とやってきた。道路が寸断され、陸の孤島と化した半島の寺で古山氏や数百人の住民は肩を寄せ合うようにして支援も届かない数日を乗り切った。

震災から13年。復興は外面的にある程度進んでも、大津波の体験とその中で失った親しい人々への思いは風化しない。震災遺族だけでなく、「漂流ポスト」を知り、なんとか故人へ思いを伝えたいという人々も手紙を寄せ始めた。

赤川氏からバトンを受け取った古山氏はこの春、長年務めた慈恩寺の住職を新命和尚に譲った。「これまで亡き人たちへの手紙をご供養することでお手伝いしてきたが、これからは赤川さんに代わって手紙に思いを込めた人たちのこともお引き受けしたい」と語る。赤い郵便ポストは地域の人々の心の拠り所として、これからも慈恩寺で護持される。

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