PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
第21回涙骨賞募集 墨跡つき仏像カレンダー2025

山上被告のツイートから事件に迫った政治学者 五野井郁夫さん(44)

ほっとインタビュー2023年9月21日 09時24分
山上被告のツイートから事件に迫った政治学者 五野井郁夫さん ごのい・いくおさん=1979年生まれ。上智大卒。東京大大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。立教大助教を経て、高千穂大経営学部教授に。専門は政治学、国際関係論、平和研究。著書に『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』(NHK出版、2012年)など。3月に池田香代子氏との共著『山上徹也と日本の「失われた30年」』(集英社インターナショナル)が出版された。

安倍晋三・元首相を銃撃した山上徹也被告(43)が2019年から事件直前の22年6月まで投稿したツイート1364件を解析した。山上被告が「失われた30年の犠牲者」との見方を示し、事件はどうすることもできない境遇を自己責任論で突破しようとした末の悲劇だった可能性を指摘する。

岩本浩太郎

山上被告のツイートを解析しようと思われたのはなぜですか。

五野井 安倍元首相銃撃事件が起きた直後、これは一種のテロであり、民主主義の敵だという報道が多くなされました。しかし、犯人の風貌からしてむしろ何も失うものがない人が一種の「無敵の人」と化して起こした凶行との印象を受けました。

本当のところはどうなのかと思い、山上氏のツイッターアカウント(「silent hill333」)のツイートを全て読み込むことにしました。分析してみると、もちろん主たる犯行動機は旧統一教会に対する恨みです。家族や自分の人生をずたずたにされたことへの復讐として犯行に至ったことは明らかでした。ただ、同時に彼はロスジェネ世代であり、失われた30年の犠牲者だったのではないかと思いました。

どういうことですか。

五野井 旧統一教会に人生を台無しにされた被害者は事件以前にも無数にいます。しかし、誰一人として山上被告のような犯行に至らなかった。犯行を思いとどまらせるセーフティーネットのようなものがあったからだと思うんです。それは様々な人間関係かもしれませんし、家族かもしれない。あるいは仕事だったかもしれません。裏を返せば、山上被告にはそういう社会的紐帯がほとんどなかった。犯行直前に手紙を託したのは身近な人ではなく、旧統一教会の問題を追い続けていたジャーナリストでした。

私もロスジェネ世代ですが、この世代の特徴は自己責任論が強いことです。自分がうまくいっていないのは自身の努力が足りないせいだと思い込みやすい。山上被告は優秀な高校を卒業し、難しい資格を次々と取っていく。家族を救うために自身に保険金をかけて自殺未遂まで起こしている。その行動力故に手製拳銃の作り方を自分で調べて実行してしまうところにたどり着く。全て自分一人で抱え込み、一人でできてしまうところに彼の悲劇性を感じざるを得ません。

山上被告のツイートにはエリートに対する期待を感じさせる箇所がありますね。

五野井 エリートに対する期待はあったでしょうね。22年1月に「恵まれた者、…

つづきは2023年9月13日号をご覧ください

学芸員として30年、美術展を手掛けてきた 古田亮さん

学芸員として30年、美術展を手掛けてきた 古田亮さん

10月25日

学芸員として約30年、分野を問わず様々な美術展を手掛けてきた。今春には東京芸術大大学美術館で「大吉原展」を企画して話題を集め、現在は来年3月に始まる承天閣美術館開館40周…

伝統文化を生かす日本画家 伊東正次さん

伝統文化を生かす日本画家 伊東正次さん

9月30日

日本画の伝統にこだわりを持って描き、古民家や寺社での展示を積極的に行っている。日本人が長い歴史の中で生み出してきた空間でこそ感じられる、本来の美の楽しみ方を取り戻す試みだ…

「沖縄戦の図」展示のため美術館を開館した 佐喜眞道夫さん

「沖縄戦の図」展示のため美術館を開館した 佐喜眞道夫さん

8月27日

画家の丸木位里・俊夫妻が描いた「沖縄戦の図」(縦4㍍、横8・5㍍)を展示するため、沖縄県宜野湾市の米軍普天間基地内にあった先祖の墓と土地を返還させ、1994年に美術館を開…

勤労感謝の日 仏教における労働の意義(11月20日付)

社説11月22日

古文・漢文の教育 文化的含蓄を学ぶ意義(11月15日付)

社説11月20日

災害ボランティアの課題 現地のコーディネートが要(11月13日付)

社説11月15日
このエントリーをはてなブックマークに追加