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皆が食べられる世界目指すFAOの駐日事務所長 日比絵里子さん(60)

ほっとインタビュー2025年2月25日 13時36分
皆が食べられる世界目指すFAOの駐日事務所長 日比絵里子さん ひび・えりこさん=1964年生まれ。上智大卒。英国と米国で国際関係学修士号を取得した。国連人口基金(UNFPA)を経て2011年にFAO入職。紛争下のシリア事務所所長、サモアにある大洋州事務所所長などを経て20年から駐日連絡事務所所長。

「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」――。人道支援で食べ物を直接支援することも重要だが、今後食べ物を作っていける状況を支援することもまた重要。国連食糧農業機関(FAO)の役割を端的に示した言葉だ。厳しい食料事情の国へも赴任し、その重要性を深く認識した。「日本の皆さんにも世界の食料問題を知ってほしい」と訴える。

佐藤慎太郎

現在の仕事に就くきっかけは何でしたか。

日比 もう30年近く国連職員を務めています。そもそもは環境問題に関心がありました。私は帰国子女で、父の仕事で西ドイツやイギリスなどを転々としていました。デュッセルドルフにいた7歳くらいの時でしょうか。オイルショックのせいでガソリン不足となり、土日は車の利用が禁止されたんです。何も走っていない広々とした高速道路を目の当たりにして「石油がないと車は走らなくなるんだ」と深く記憶に残り、それが私の原体験となりました。

国連人口基金(UNFPA)でウズベキスタンに赴任していた際、春先に食べ物が何もなくなるという経験もしました。夏にはバザールに色とりどりの果物が並んでいたにもかかわらず、冬はジャガイモやタマネギ、乾燥果物で食いつなぐことになり、ついにバザールには腐ったジャガイモとタマネギしかなくなりました。その時が人生で一番食べ物に苦労しましたね。

何げなくスーパーに食べ物が並び、常になくなることなく買えるということ、絶え間なく供給してくれるサプライチェーンの恩恵にいかに依存していたのかを、身をもって深く実感しました。

食べ物に関する経験はやはり後々まで残りますね。FAOに移ってから、食料はただ生産して終わりではないと再認識しました。生産者と消費者をつなぎ、また安全基準などが全てあって初めて成り立つことなんです。

そもそもFAOとはどのような組織ですか。

日比 戦後すぐの1945年の設立で本部はローマです。食や農に関する同じような国連機関でも、人道支援を行う国連世界食糧計画(WFP)や、融資機関である国連国際農業開発基金(IFAD)とは異なり、FAOの活動には「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」という言葉が当てはまります。例えば人道危機の下であっても直接的な食料支援ではなく、どうやって食料の安定した生産・供給・消費が可能になるか、サプライチェーンを回復できるかに注力することが特徴です。

人々が健全で活発な…

つづきは2025年2月14日号をご覧ください

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