門前市で世代間交流 檀家が誇り感じる寺に
千葉県柏市 曹洞宗長全寺
千葉県柏市の曹洞宗長全寺は檀信徒だけでなく広く地域社会に開かれた寺院だ。隔月開催の門前市では、境内に地元産の野菜や特産品などを販売する店が並び、子どもからお年寄りまで多くの人でにぎわう。武田泰道住職(49)は「寺院の役割は地域の人が集える場を提供すること。顔が見える交流が住民の安心につながる。一人でも多くの人に仏様とご縁を結んでいただくために開かれたお寺でありたい」と語る。
32歳で住職に就任した。先代の第33世中興・武田泰法氏は、大規模な社葬にも対応できる式場や納骨堂を備えた檀信徒会館「飛雲閣」を建立するなど伽藍整備に尽力した。偉大な先代の後を継ぐことに大きなプレッシャーがあった。「師はあまりにも大きな存在。比較されて当然。期待に応えられるか悩むこともあった」という。自分にできることは何かを考え、一つの答えを出した。
晋山式の場で武田住職は、自分の代では新しい建物を建設しないと宣言した。「ハード面は先代がそろえてくれた。自分はソフト面を充実させたい。地域全体のためにできる限り努め、長全寺の檀家であることを誇りに思ってもらえるようなお寺にしたい」と考えた。
門前市をはじめ、シャンソンのコンサートや社交ダンス教室、地元のジュニアストリングスオーケストラのコンサートなど様々なイベントを催している。これらのイベントは全て檀信徒の発案だ。「地域の方が主体的にアイデアを持ってきてくれる。お寺として、それが誰かの役に立つものならば積極的に協力したい」と話す。柏市の委託を受け、就労支援事業にも参画している。
門前市は、東日本大震災の後、原発事故の影響で風評被害に苦しむ地元農家の支援を目的に始めた。現在は世代間交流や農福連携、SDGsへの寄与を新たな目標に掲げる。ポスターの作製や運営には地元の高校生が学校公認のボランティアとして参加。社会参加の機会となっている。
様々な取り組みに挑戦する武田住職だが、何よりも大切にしているのは法要や日々の行持を丁寧に行うことだという。「宗教界を取り巻く環境は、年々厳しさを増している。一つ一つの檀務を丁寧に勤めることが、お寺と檀家さん相互の信頼につながる。これまで信頼してお寺を支えてくれた檀信徒の方々の付託に応えたい。常に『お寺はこうあるべきだ』という姿を体現する寺院でありたい」と語った。
(奥西極)