幼稚園を核に教育活動 コロナ機に改革進める
名古屋市守山区 浄土宗浄土院
名古屋市守山区の浄土宗浄土院は同寺を母体とする守山幼稚園を核に様々な教育事業を展開している。1日には児童発達支援事業所「あったか」を境内に開設。活動を牽引する園長の児玉匡信副住職(46)は「お寺である以上『檀家のためだけではなく、地域全体が良くなるためにはどうすればよいか』とよく考える」と話す。
守山幼稚園の園長に就任したのは11年前だが、実は1年半ほどで「幼稚園はもうやめたい」と思ったところから出発している。同園は祖父の諦圓氏が敗戦直後の混乱期に創立した区内最古の幼児教育施設として地域の信頼を得てきたが、長年の慣例の弊害で当時は運動会や発表会など年間行事の開催に職員も在園児も追われるような状況があり「行事のための行事で、これで一体、誰が得をするのかと本当に悩んだ」。
そこでスタッフと話し合いながら一つずつ現状を改める努力を重ねた。特に大規模行事が制限されたコロナ禍をチャンスと捉えて改革を進めると、雰囲気が「ガラッと変わった」と振り返る。
大きく変えたのは「子どもがやりたいことをやりたいようにさせる」。あらかじめ行事を設定するのではなく、各クラスや数人のグループ単位などでやりたいことや発表内容を決めるように改めた。現在は希望や必要性がある場合を除いて運動会のような「園全体の行事」は実施していない。
こうした転換に伴い、9年前から発達障害がある子どもの受け入れも始め、障害の有無にとらわれない教育を実践。また、昨年12月に不登校の小中高生を対象にしたフリースクール「てらこやさん」も浄土院内に開校した。ここに通う児童・生徒は守山幼稚園の園児と交流しながら自分たちで考えたカリキュラムに沿って学んでおり、境内にはインクルーシブな空気が現出している。
さらに守山区内に児童発達支援施設が不足している現状も踏まえ、未就学児を対象に必要な療育を施す「あったか」を開所した。ここでのノウハウや知見は守山幼稚園だけでなく、地元のほかの幼児教育施設とも共有し、地域全体の教育環境の向上を目指す方針だ。
様々な考えや特性、事情を抱えた人々を特定の属性に分類して押し込め、そこにあるべき「正しさ」を求める風潮がある。児玉副住職は「現代の『正しさ』は『大人も子どもも苦しめる正しさ』になっている。そんな『正しい』に代わる形容詞を見つけたい」と強調した。
(池田圭)