道元とシュタイナー(Ⅱ)…塚田幸三著
人智学を創始したオーストリア出身の哲学者、神秘思想家のルドルフ・シュタイナー(1861~1925)の思想との比較検討を通して、曹洞宗の祖である道元の仏法を理解しようとする一冊。2012年に刊行された『道元とシュタイナー』の続編。シュタイナーのホメオパシー理論に関する書籍の翻訳を多く手掛けた著者が、シュタイナーの視点から「只管打坐」「身心脱落」など道元の特徴的な思想の再解釈を試みる。
著者は近年、多くのキリスト教徒が参禅し、キリスト教の信仰と坐禅を両立させている事例を紹介。禅の特異な点として「宗教一般に特有な諸規定を超出している」ことを挙げた上で「禅はそれぞれの宗教の理解や信仰を深めるのに役に立つとともに、宗教間の対話に貢献できる」と指摘する。またそのような立場は「何かしらの新しい宗教を提示しようとするものではなく、かえってどの宗教とも矛盾せず、それぞれの宗教が伝える叡智や真理あるいは命の秘密をより深く理解することを目指すもの」であるシュタイナー思想と共通すると主張する。
第4章「脱落身心」考では、西田幾多郎の晩年の論文「場所的論理と宗教的世界観」を起点に、両者の思想的探究に共通する「脱落身心の姿」を描き出す。
定価2200円、千書房(電話045・430・4530)刊。