女を脱ぐ 人生に効く仏教と物語…三野恵著
女性として様々な苦難を体験した後、自らがどう人生に向き合っていけばいいのか。女性として生きることだけを考えるのではなく、いったんリセットして別の方法で生きたい。そう願い、それぞれが仏道を志し、女を脱いだ物語集だ。
平安時代から現代までの有名な物語や評伝を基に、登場する女性仏教者の逸話を紹介する。仏教と深く関わる人生の転機や、仏教を生きる糧とする姿を通して、今を生き抜く指針を探る。
『平家物語』に出てくる祇王、『源氏物語』の浮舟、芸妓から尼僧になった高岡智照、作家・僧侶の瀬戸内寂聴といった、浮き沈みの激しい人生を送った女性の名が連なる。高岡智照の章では、ピストルを持って追いかけてきた男から逃れ、老夫婦の家の2階で観音経を唱えるようになったことを出家の動機として紹介する。
著者は作家・日本文学研究者の三野恵氏。本書で取り上げた女性の生き方について「その根底には、『自分はほかの人とおなじようにはふるまえない』という、生きることへの違和感があった」と指摘、自らも近い感覚を持っているという。平易な文章でコラムも挟む。女性だけでなく、女性を深く理解したいと考える男性にも読む価値があるだろう。
定価2640円、言視舎(電話03・3234・5997)刊。