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「ネットde真実」 正しい情報を発信する責任(12月11日付)

2024年12月13日 09時52分

インターネット上で「ネットde真実」という言葉を目にする。「ネットで真実を知った」という意味だが、実際にはネット情報をうのみにする人たちをやゆし、あるいは冷ややかに笑う意図を含んで使われる。これは、世論の動向や社会認識に大きな影響力を発揮しているネット情報に対して、ネットを利用する人たちの間で懐疑的な判断が生まれていることを物語っている。つまり「正しい情報」の選別は難しいが、偏った情報やデマがいつまでも人々を信じさせることはできず、いわば時間をかけて情報が事実に向かってバランスを回復する現象が起きていることを示しているのではないか。

ネット情報が政治的判断を大きく左右する力を見せたのは7月7日の東京都知事選である。トップ当選した小池百合子知事に次ぐ得票数を獲得した石丸伸二氏は、SNSや動画サイトを駆使した選挙戦で若者層や無党派層を中心に支持を広げ、この「石丸現象」はネット時代の新現象として背景分析が様々に論じられた。

10月27日に実施された第50回衆院議員選挙で、選挙前の7議席から4倍増の28議席へ大幅に議席を伸ばした国民民主党の躍進でも、「年収103万円の壁を引き上げる」などの具体的な政策と同時に、ネット戦略の巧みさが保守層の一部や無党派層を含む20~30代に支持者を広げる上で重要な意味を持ったと指摘されている。11月17日投開票の兵庫県知事選では、パワハラ問題などで県議会から不信任決議され失職した斎藤元彦・前知事が再び立候補して圧勝した。斎藤氏自身が当選後、SNSの力(プラス面を)実感したと語っている。

「マスメディアは真実を伝えていない」と不信や不満を表明するネット情報が一定の支持者を集め、SNS上の共感や閲覧数で「何が正しいか」を判断する傾向が増幅している状況に対し、虚実入り混じったネット情報を正しく理解するためのネット・リテラシー(技能)の必要が訴えられている。「ネットde真実」という言葉の背景には、「ネット情報の正義」への過信が危険性を伴うことへのネット利用者による自覚的な理解があると言ってよい。

「言論の自由とは何を書いてもいい訳じゃない。それは自由ではなくて『言論の無法』、みんな『言論の責任』があります」――ネット上に殺人事件の関係者とデマを書き込まれて長年苦しんだタレントのスマイリーキクチ氏(インターネット・ヒューマンライツ協会代表)の言葉は重い。

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