COP29が示す分断 気候正義の担い手の宗教(11月29日付)
アゼルバイジャンの首都バクーで24日まで、国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が開かれ、開発途上国への資金援助を2035年までこれまでの3倍の3000億㌦(46兆円)を目標とする合意を掲げて閉会した。
今回の陰の主役は米大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ氏だったかもしれない。トランプ氏は1期目の大統領在任中に温室効果ガス排出削減に関する「パリ協定」から脱退(バイデン大統領の就任後復帰)。このたびの選挙期間中に同氏は「(化石燃料を)掘って掘って、掘りまくれ」とアジテーションし、反・脱炭素の主張をエスカレートさせている。当選後、いち早く環境保護局長官予定者を指名し、アメリカ・ファーストの推進に期待を寄せた。
その影響もあったか、COP29には暗雲が垂れ込めた。会期を2日間延長したが、気候変動の影響が大きい小島嶼国などの代表らが支援レベルの低さを不満として議場から退席。一方では、トランプ氏と同じく大統領が脱炭素論に批判的なアルゼンチンが代表団に帰国命令を出すなど、温暖化対策への国際的取り組みの機運をしぼませる動きもあった。
気温上昇を産業革命前と比較し1・5度に抑えるパリ協定の目標は「気候正義Climate Justice」実現の条件と考えられる。温暖化でいま最も被害を受けるのは弱者であり、悪化する環境に生きる次の世代だ。気候正義の概念は世界に共有されつつあり、ローマ教皇フランシスコも15年の回勅「ラウダート・シ」で環境問題について提唱。その後も、強い危機感を込めて発言を重ねてきた。
他方、同じカトリックでも、トランプ氏の熱烈な支援者として知られるバチカンの元駐米大使・ヴィガノ大司教は「環境問題に関する狂気の回勅」などとあからさまに教皇を批判し、今年7月に(それだけが原因ではないが)「破門」されている。トランプ氏やヴィガノ大司教らには別の「正義」があり、それに共鳴する人たちも多くいるということであろう。ただし、20~30年後に生きる米国民がそれを是とするかどうか。
ロシアのウクライナ侵攻が戦闘拡大の兆候を見せ、ヒズボラとの停戦が発効したが、イスラエルのガザ攻撃は収束の見通しがつかない危機的な状況下、人類の将来を左右する気候変動問題が深刻過ぎる分断をさらけ出している。前回のCOP28から宗教者の発言は積極的になっているが、まだ気候正義をリードするまでには至っていない。しかし今後、その役割に期待が高まってくる可能性がある。