政治と宗教 透明で緊張感を持った関係(10月30日付)
衆議院総選挙の投開票が27日に行われ、自民党・公明党の連立与党が過半数を割るという結果になった。メディアの選挙報道は、市民の批判が「政治と金」の問題に集まったという見方を示したが、生活を直撃する物価高が有権者の強い関心事ではあったと思われる。生活への不安と裏金で汚れた政治への嫌悪感の相乗効果が議席変動に反映したのではないか。
獲得議席数は立憲民主党が50議席増、国民民主党が21議席増で国民の期待が寄せられた形だ。政策活動費以外に、直近の問題としては旧統一教会と政治家の癒着がクローズアップされ、政治不信をかき立てた。共に国民の信を裏切った議員の姿勢が問われるところであったが、自民党自体は65議席の大幅減ではあったものの、第1党の位置は守った。そのことも、勝利を喜ぶ野党側は重く受け止めておくべきかもしれない。
今の状況の根底には、政治そのものへの深い不信感があり、今回の選挙で躍進したとはいえ、その点は野党側も無関係ではない。投票率は54%弱であったという。60%に満たない低投票率は国政選挙でここ数回続き、政治への期待の低さを示している。こうした国民の不信感、無関心は国の将来を危うくするものである。
選挙戦の争点までにはならなかったが、外交・安全保障や選択的夫婦別姓など、直面する問題は数多い。立憲民主党などが自民党に肉薄した今こそ政策について議論を重ね、是は是、非は非として民主主義のルールに則って国権の最高機関の役割を担ってほしい。この期に及んで、相も変わらず党利党略、政治家の私利私欲で政治を動かすようでは、国民が示した期待を決定的に裏切ることになる。
一方で旧統一教会が社会問題としてクローズアップされ、政治と宗教の関係の在り方も問われた。多くの国民の脳裏には、安倍晋三・元首相の狙撃事件の映像が深く刻まれているだろう。あの悲劇は不適切な政治と宗教の関係を象徴的に我々の目の前に突き付けた。
統一教会問題を長年研究してきた櫻井義秀・北海道大教授は、「政治と宗教が緊張感を持った関係を維持すること」が政教関係のあるべき姿である、と近著(『宗教と政治の戦後史――統一教会・日本会議・創価学会の研究』)で指摘している。宗教と政治の関係そのものを否定するのではない。政治と宗教が、お互いのよって立つ場を意識して、緊張感を持って相対することが必要だ。その関係が社会的に「透明性」を感じさせるものであれば、宗教および政治への信頼感も復活するだろう。