社会に仏教の公益性を
全日本仏教会 池田行信理事長(71)
全日本仏教会の理事長にこのほど就任した。「全日仏に求められているのは公益性。一宗派だけでは対応できない災害や過疎・人口減少、ジェンダー平等などの課題に対する窓口・調整役となり、同時に社会に対しても仏教や寺院の公益性をしっかり説いていかなければ」と抱負を語る。
浄土真宗本願寺派の宗会議員、総務、総長などを歴任。自坊の慈願寺(栃木県那珂川町)は親鸞聖人の高弟・信願房が開基であり、25世を継ぐ者として育った。博士課程まで進学した龍谷大では、真宗学の聖教の解釈だけでなく、むしろ聖教に基づく教団の在り方やその社会的責任、そして社会的な実践へと関心が向いた。差別や平和、女性、いのちなどのテーマは今も変わらず持ち続けている。
その後、布教使として全国の寺院を駆け巡った経験で進むべき方向が定まった。「聖教が大事なのは大前提だが、やはり現場を知る必要がある。地方の寺院の現状や課題を目の当たりにし、構造的な問題としてこれを変えていかねばならない」と決意を新たにした。
宗会議員となった直後の2006年から2年間、全日仏の事務総長に就いた。創立50周年記念事業や他宗派の人々との交流を通じて、いかに自宗派のことしか知らなかったかを反省。「目からうろこの経験ばかり。人生は就いたポストで何を学ぶかで大きく変わると実感した」と振り返る。
来年は戦後80年の節目の年。しかし世界各地で紛争は絶えない。「世界平和に向けて、仏教という枠を超えた、宗教者としての視点に立った活動も必要となる」と展望する。
(佐藤慎太郎)