法流守るために革新を
真言宗醍醐派総本山醍醐寺 壁瀬宥雅座主(75)
昨年12月8日に醍醐寺(京都市伏見区)の座主に就任した。今年11月の開創1150年慶讃法要に向けて「派手な記念事業があるわけではないが、法要の中身にはこだわりたい」と意気込む。
醍醐寺塔頭の理性院で生まれ育った。母の勧めで4歳からバイオリンを習い、中学からチェロ演奏にのめり込んだ。同志社大の学生時代にはアルバイトの演奏依頼がひっきりなしに舞い込むほど上達。「あの頃は一生チェロを弾いてやろうと思っていた」と笑う。
だが、寺の一人息子ということもあり、同志社大卒業後に種智院大に編入。祖父との縁で後の座主・岡田宥秀氏が師僧となった。「そらぁ怖い方でした。ただ師僧をお願いした時だけは優しかった。それまで音楽ばかりやってたんが気に入らんかったんでしょうな」
1982年から醍醐寺寺務所に奉職。仲田順和執行長時代に財務部長を務め、同氏の座主就任に伴い2010年から執行長に。竪義会や太元帥大法を再興させるなど古儀復興に尽力した。
復興に携わり、寺に残された膨大な古文書の重要性を再認識した。「革新的な試みを絶えず続けてきたからこそ千年以上も寺が持ちこたえてきた。法流は曲げることなく守り伝えなければならないが、そのためには様々な面で新たなことを導入する必要もある」
仲間と結成した合奏団が1997年から毎年続ける演奏会には今もチェロ奏者として出演。「楽器演奏は毎日練習を重ねることで本物になる。同じ真言を何千遍唱えるといった行を続けることで真理が芽生える密教の修行と何か共通するものがある」
(岩本浩太郎)