自然資源生かし「農福連携」 傾聴喫茶 地元と運営
北海道えりも町・曹洞宗法光寺 佐野俊也住職
北海道えりも町と近隣自治体の宗教者や医療関係者らでつくる「カフェデモンクえりも」の代表を務める。月に1度のサロンをはじめ、地域の自然資源を生かした「農福連携」の活動など様々な取り組みを通して地域のコミュニティーづくりに貢献している。「ケアする人と、ケアされる人という一方的な関係ではなく、みんなで集まって話をしたり、仲間をつくったりできる緩やかな関係を地域住民の目線でつくっていきたい」と話す。
2018年の北海道胆振東部地震の際、被災地支援を行った移動傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」の活動に、精神科医の川村敏明氏が院長を務める浦河ひがし町診療所の患者らが参加。普段はケアされる側の患者が、主体的に活動し「自分たちも誰かの役に立つことができる」という自信につながったことからヒントを得て、一方的ではない人間関係を継続させたいとカフェデモンクえりもを発足させた。
サロンには、えりも町の地域住民や心の問題を抱える人とその家族、看護師やソーシャルワーカーが集まり、対等な関係で会話を楽しむ。体操教室や、研究者を講師に招く特別イベント「哲学カフェ」も人気だ。
地元の業者と協働しての農福連携プロジェクトは今年3年目を迎える。一年を通してトマトやほうれん草の生産を、苗植えから出荷、販売まで行う。収穫には、普段は農業と縁のない地元幼稚園の園児も参加する。トマトは地元のマルシェのほか、札幌市で開かれたフェスでも販売した。「農業を通して、自ら身体を動かす喜びを知ってもらいたい。えりも町は漁業不振の影響もあり、産業が苦境に立たされている。将来的には農福連携のプロジェクトを事業として発展させ、新しい雇用を生み出したい」と話す。
活動する上で「同じ人と人の付き合いである」ことを常に意識している。「宗教者は、どうしても一つの枠の中で考えてしまうことがある。住職と信徒という関係を離れて同じ目線で考えると、無意識の差別意識や傲慢さに気付くこともある」という。
「『仏教的に言えばこうだ』という理屈は実は後付けで、単純に、様々な人と一緒に活動するのを楽しんでいるということも多い。肩肘張らずに『一緒に楽しくお話ししませんか?』というスタンスで活動の輪を広げていきたい」と今後の展望を語る。
(奥西極)