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寺再生、過疎地で宿坊 50年後も生き残れる

京都府伊根町・曹洞宗海蔵寺 天野祐至住職

「おもてなしの心が大事」と語る天野住職。右奥が宿坊「櫻海」 「おもてなしの心が大事」と語る天野住職。右奥が宿坊「櫻海」

京都府伊根町の海蔵寺で2022年12月から宿坊を始めた。宿坊を経営する曹洞宗寺院としては関西唯一で「過疎、高齢化の田舎にある寺だが、お寺の再生との思いでやってきた。工夫次第で50年後も生き残ることができる」と自負する。

同町は若狭湾の漁師町で、漁師が住む木造の「舟屋」が海沿いに整然と並ぶ。1階が舟を入れる部分で2階が居住スペース。約230棟の舟屋群が国の文化財保護の区域に指定され、レトロな雰囲気が人気の観光地になっている。

今でこそ海外からの旅行客が多いが、かつては町を挙げて観光PRしても、なかなか軌道に乗らなかった。ところが新型コロナウイルスが流行する少し前に、台湾のインフルエンサーがSNSに投稿したことで一気に有名になった。

海蔵寺の歴史は古いが無住時代が長く天野住職で9代目。僧堂で典座として修行した経験を生かし、数年前から本堂で精進料理を提供しており「いずれは宿坊をやりたい」との思いがあった。

宿坊「櫻海」は境内にあった離れを改装した。近年、境内に咲く樹齢180年の一本桜が全国的に有名になったことから、障子やふすま、布団、様々な所に桜の模様を入れた。「雪見障子」を上げれば、室内からライトアップされた一本桜を眺めることができる。

宿坊では精進料理を味わうことができるほか、本堂での坐禅体験、写経等もできる。旅行サイトやホームページなどで予約を受けるが、海外から直接電話があることも。米国をはじめ、フランス、台湾、オーストラリア、アラブ首長国連邦など様々な国から昨年は500人以上が宿泊した。5回以上訪れるリピーターもいる。

「宿坊をしたいと檀家さんに相談したところ全員が賛成してくれた。お寺は檀家さんのもので、我々は使わせていただいている」と強調し、檀家の都合や予約を最優先させている。親族らがお盆等で帰省する際に宿坊を使ってもらったり、収益の一部は護持会に回したりしている。

予約の受け付けから部屋掃除、精進料理の提供、事務会計、何から何まで天野住職がこなす。

「来られた方のニーズを聞いて要望に応える。精進がよければ精進料理、魚がよければ朝市にご一緒する。おもてなしの心が大事。伊根に来てよかったと思ってほしい」と笑顔を見せた。

(赤坂史人)

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