次の50年へ平和を願う
天台宗ハワイ別院 田中祥順住職(69)
開創50周年を迎えた天台宗ハワイ別院の第3代住職として11月に晋山した。2019年に荒了寛・初代住職と了周・第2代住職が死去するまで同別院は、日米文化交流などに取り組んできた。1年ほど別院が無住になった時期もあるが、天台宗海外伝道事業団からの打診を受けて、ハワイへの渡航を決意した。
大正大大学院で天台学を専攻し、修士課程を修了。自坊・光巌寺に入り保育園長を務めたほか、06年から宗議会議員、13年から17年まで天台宗の財務部長を歴任した。荒夫妻が19年に続けて亡くなった後、新型コロナウイルスの影響で思うように渡航できなかったが、21年に別院の特命代務者となりハワイに移住。今年9月、住職に就任した。
日系移民は1868年以降にハワイへ渡った。檀信徒は日系人だが数は多くなく、減ってきている。「太平洋戦争時、日系3世の人たちは収容所に入れられ、日本語を話すことを禁じられた。キリスト教に改宗した人も多い」と危機感を抱く。
法話は日本語と英語の両方を用意し、正月の初護摩、お彼岸供養、お盆供養、毎月18日の観音講に力を入れている。「これからは英語で布教していく活動が必要だ」と指摘し、ニューヨーク別院とも連携しながら、米国人などへのアプローチも強めていく構え。
「宗祖伝教大師の『一隅を照らす』『忘己利他』の教えが大切。己のことは後回しにする気持ちでいれば、人間同士がいがみ合うことはなくなり、戦争のない平和な世界になる」と強調し、荒氏の思いを継いで日米の平和教育にも力を入れていく覚悟だ。
(須藤久貴)