国宝化へコツコツと
日蓮宗本山妙成寺 藤井教公貫首(74)
石川県羽咋市の本山妙成寺に晋山が決まった。五重塔をはじめ伽藍10棟が重要文化財で、県内初の国宝建造物にとの機運が高まる中での就任だ。仏教学研究者として蓄積した知見と温厚な人柄で寺門興隆に努めていく。
自坊は東京・小伝馬町の身延別院。故藤井日光・先代住職(総本山身延山久遠寺91世法主)も妙成寺貫首を務めた。1973年の冬、師匠の仮入山に同行した時のことが思い出深い。煎餅布団は湿気で重く、雨戸の外からドスンと雪の落ちる大きな音が何度も響いた。やっと布団が温まりかけた頃に朝勤で起き、本堂で読経する師匠の背中は雪で白くなっていた。
東京大大学院博士課程を満期退学後、北海道大などで教授を務めた。専門は中国天台教学、日本法華思想史。現在も国際仏教学大学院大学長、中村元東方研究所理事長の職にあるが、僧侶としての報恩の思いから二足のわらじを決断した。
妙成寺は加賀藩前田家の厚い外護で隆盛を極め、江戸時代初期に七堂伽藍が完成。日蓮宗伝統の「三堂並置」が当時のまま残る唯一の寺院であり、宗門初の国宝建造物を期待する声も強い。しかし檀家は約50軒。昨秋には五重塔の屋根に穴が見つかった。近年は地元自治体の石川県・羽咋市とも国宝化運動に力を入れ始めている。
「お参りされれば聖なるものを素直に信じる心が生じると思う。まずは情報発信してお寺を知ってもらい、寺子屋や講演会などで何度も足を運んでいただき、多くの方が支えてくださるようにしたい。できることをコツコツやっていくだけ」。晋山式は来春行われる。
(有吉英治)