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重要な「地域資源」として 早期の復興望まれる宗教施設

大阪大教授 稲場圭信氏

時事評論2024年6月19日 09時36分

令和6年能登半島地震からの復旧・復興のため、5月31日、政府は石川県が設置する復興基金に特別交付税による520億円の財政支援を決めた。石川県は、被災地支援宝くじの収益から県に配分する19億8千万円も財源に加えて539億8千万円を「能登半島地震復興基金」にする。

基金は補助金の支給要件に該当しない事業などに活用でき、馳知事は6月5日の県議会定例会の一般質問の答弁で、被災した寺社の再建を支援する意向を示した(北國新聞6月5日)。過去の大災害でも事例があり、寺社等宗教施設が地域資源、地域コミュニティーの核としての機能を持つという観点からの支援になる。

しかし、間違った認識に基づき、宗教法人が災害復興、防災・減災の取り組みで排除されることがある。解体だけでも多額の費用がかかり、「宗教法人は行政の支援の対象から外れている」とクラウドファンディングで費用を募っている宗教施設があるのが能登半島地震の被災地の実態だ(中日新聞3月6日)。無論、クラファンなどで幅広く支援を求めるのは大切な支え合い支援の取り組みであるが、宗教施設だからという理由だけで公的な支援の対象から除外されてはならない。公費解体、復興基金、指定寄付金制度などが適用されてしかるべきである。

宗教法人が所有する建物も全壊および半壊の建物は災害廃棄物として公費解体の対象である(「公費解体・撤去マニュアル第1版」令和6年1月:環境省)。令和6年能登半島地震は「特定非常災害」に指定されているので、全壊に加えて半壊家屋も対象だ。神社、仏閣等は事業所、店舗と同様に住家以外の建築物であり、罹災証明ではなく被災証明書の発行が必要だが、倒壊の危険がある場合は緊急的に解体し、その費用も補助の対象となる。

また、滅失・損壊した公益的な施設等の復旧のために、宗教法人を含む公共・公益法人等が募集する寄附金で、一定の要件を満たすものとして所轄庁の確認を受けたものについては、寄附者は所得税又は法人税の税制上の優遇措置の適用を受けることができる(文化庁「令和6年能登半島地震に係る指定寄附金について(宗教法人)」)。

能登半島地震で多くの宗教施設が被災する一方で、避難場所・避難所となり、住民の命を救った宗教施設が30ほどある。物資集積・配布場所となり、支援拠点として機能した。そして、宗教者は、超宗派、大学、災害NGO、社会福祉協議会、行政と連携して、一般のボランティアが活動できない初動から、支援物資、炊き出し、がれき撤去、足湯などで力を発揮した。

一方で、避難所となった宗教施設に行政からの連絡や支援がなかった。今後、災害協定を締結するなどして協力体制を明確にする必要性が明らかになった。全国の自治体に共通する課題として認識して取り組むべきものである。地域の安全安心のために、より一層の連携体制の構築が急務である。そして、もうひとつの課題は、まさに地域資源としての宗教施設、コミュニティーにとって必要な場の再建だ。課題は山積だが、今の日本において待ったなしの取り組みである。

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