カフェ開き「一筆法語」配布 介護者の心身 安らぎを
東京都葛飾区・浄土宗専念寺 耕野孝順住職
東京都葛飾区の浄土宗専念寺は定期的に、介護についての悩みや経験を分かち合うための「介護者の心のやすらぎカフェ」を開いている。耕野孝順住職(42)は「参加者も私もお互いに、無理をしていては続かない。細々とではあるが地に足をつけた息の長い活動にしていきたい」と話す。
カフェの参加費は無料で、入退室も自由だ。原則土曜日、3カ月に1度程度のペースで催している。少しでも参加者の気持ちが軽くなればと、四字熟語の「一筆法語」を毎回配る。例えば「全生全帰」とは、親から授かった体を大切にすることが何よりの親孝行という意味。耕野住職は、ストレスや介護で疲れている参加者自身の身も大事にしてほしいと解説した上で、思いを込めて手渡している。
浄土宗からの立ち上げ支援もあることで全国的な広まりを見せている「介護者カフェ」だが、専念寺では2019年春から始めている。きっかけは、同じ葛飾区にある浄土宗香念寺での「介護者カフェ」の取り組みだった。
耕野住職自身、母方の祖父が寝たきりになったのを機に、ホームヘルパーの資格を取得するなど介護に関心が高かった。また、同じ区内に開催場所が二つあれば住み分けや連携ができ、なかなか外部に向けて口に出すことができない介護の悩みを抱える参加者にとって、利便性が高いと考えた。
立ち上げ当初は、香念寺の下村達郎住職に司会役を依頼。進行の仕方や参加者との距離感などを徐々に学んでいった。「今では浄土宗が支援するようになり、立ち上げ方が確立されているが、当時は本当に手探りだった」と振り返る。
参加者の多くが介護の当事者であることから、コロナ禍では感染防止のため全面休止とせざるを得なかった。昨年になってようやく再開。9日に開いたカフェは春彼岸の案内に合わせて告知していたものの「なかなかカフェの実態を理解してもらえず、参加に二の足を踏む人もいるようだ」。ただし檀家や家族の知人など5~6人という人数は、参加者が一つの机を囲んで耕野住職の目が十分に届くちょうどよい人数だという。
同寺の庭は、先々代の住職が戦後に本堂を改修した際に併せて整備した自慢のもの。「参加者には庭を眺めながらお茶を飲んで近況を話してもらい、気持ちよく帰っていただきたい」とにこやかに耕野住職は話す。
(佐藤慎太郎)