改訂新版 密教の話 曼荼羅の世界…金岡秀友著
1981年に発刊された密教理解のための解説書が、著作権継承者の了解と協力のもと加筆訂正された上、復刊された。碩学による『大日経』をはじめとする主要経典の解説はもちろんのこと、密教の世界観や人間観、その哲学的構造などに対する深い洞察がちりばめられている。
インドにおける密教の誕生からその後の展開、日本に密教をもたらした空海の思想、現代社会における「密」なるものへの見直しなど、時代も場所も多岐にわたる密教に関するテーマを、時には伝統的な真言教学の視点から、時には西洋の象徴論や神秘主義思想なども援用しながら縦横無尽に読み解いていく。「インドの仏教の歴史において、密教はその良心の最後の悲鳴であった」「密教は現世利益に哲学的基礎を与えた宗教といってもよい」等、現代的な視点からするとやや刺激的な文言ながらも快刀乱麻の味わいがある。
復刊に際し解説を執筆した著者の長男に当たる金岡秀郎・国際教養大特任教授は「父はしばしば『密教は仏教の最後の形態だから、密教の研究者はそれまでの思想史をすべて知らなければならない』と言っていた。これが過剰な自負としても、本書の多方面の実例は父の意識と知識の反映とみてよかろう」と指摘している。
定価1980円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。