法然と共に生きる 生きづらさを解消する31のヒント…平岡聡著
今年、浄土宗は法然上人による開宗から850年の節目を迎えた。本書は『浄土宗新聞』に掲載された開宗記念の連載「法然上人の生き方に学ぶ」を下敷きに、法然上人の生涯と教えを平易な文章でたどり、生きづらい世を生きる現代人への羅針盤を提示する。
31話からなり、法然上人の生い立ちから往生に至る足跡を「法然上人行状絵図」などの記述を引用しながら概観する。宗門人向けの表現は少なく、むしろ他宗派の人や在家の人を意識した内容になっているのは、法然上人を身近に感じてもらいたいという書き手としての狙いであり、気配りと言えるだろう。
法然上人の生涯と思想を基軸としながら、各話で取り上げるテーマは現代人が抱える様々な問題や悩みそのもの。親と子の関係、他者とのコミュニケーション、老いや病との向き合い方など、誰もが避けて通れない無数の「生きづらさ」について、法然上人の言葉や事績を通して学びを見いだしていく。
生きづらさとはいつの時代も変わらない普遍的なものだろう。苦悩や絶望、怒りは人生につきまとい、離れようとしない。タイトルにある「共に生きる」が示唆するように、生きとし生ける全てのいのちを尊重し合う「共生」の思想にこそ、生きづらさを生き抜くヒントがあるのかもしれない。
定価1650円、浄土宗出版(電話03・3436・3700)刊。