改訂新版 天文法華の乱 戦国京都を焼き尽くした中世最大の宗教戦争…今谷明著
天文法華の乱は、天文5(1536)年7月に、京都を舞台に勃発した法華宗(日蓮宗)諸寺院と檀徒を中心とした集団と、近江六角氏の軍勢および延暦寺大衆の連合軍の間で繰り広げられた合戦。下京全域と上京の3分の1を焼き尽くし、革堂、誓願寺、百萬遍などの大寺院もこの時に炎上した。
この争乱に先立つ同年3月に一条烏丸の金山天王寺で行われた、天台の学僧・華王房と坂東の武士・松本新左衛門尉の問答が引き金となった。
背景には一向一揆と法華一揆の対立や民衆による反封建闘争の側面、室町幕府内部の派閥争いもあった。
著者はこの乱を一宗門の教団史に限定せず世界史的視座を示す。1572年にパリで起こったセント=バーソロミューの大虐殺を参照し、封建社会が中世から近世に移行する過渡期の中心都市で起きた権力側(旧教)の新教に対する弾圧という共通点を指摘した上で、16世紀の京都の経済の発展段階が通説より高いものだと述べる。
本書は約35年前に出版された同名著書の3版目の重版本。争乱の推移を地図、同時代資料を分析し詳細に叙述した。刊行を機に、新たな研究成果も掲載する。解説は河内将芳・奈良大教授。
定価3080円、戎光祥出版(電話03・5275・3361)刊。