四本対照 法華経読誦音の手引…本田義純編著
法華経は天台宗や禅宗、日蓮門下の教団を中心に読誦されている。日蓮宗では『日相本』、天台宗では『慈海本』、天台真盛宗では『山家本』の影響を受けている。
著者は日蓮宗に属し「日相本読み」を常とするが、法華経読誦音史において自身の読み方はどのような位置付けにあるかを捉えたいとし、他の本と対照比較する必要があると考えた。
著者は前述の三つの本に、南北朝期に開版された「希杲版法華経」をルーツとしている『嵯峨本』を加えた。序品第一から第二十八まで、音の異なる箇所や注目すべき箇所を列挙した。読む音をカタカナで表記する対照表を収録したほか、各本の解題も掲載した。
奈良時代、国家年分度者は金光明経と法華経を読誦できることが義務付けられていた。また桓武天皇は在位中の793(延暦12)年に和音読みから漢音読みへの統一を勅命で全僧侶に命じ、国是として漢音読みへの転換が図られた。少なくとも平安前期までは、全ての僧侶の法華経読誦は「異口同音」だったが、後に年分度者の制度が失われ、読誦音も徐々に損なわれたという。
時代を経た江戸時代には、幕府の統制下で再び各宗派で法華経読誦音の統一が図られた。
定価10450円、国書刊行会(電話03・5970・7421)刊。